就任3年目を迎えた韓国の朴槿恵(パククネ)大統領の正念場が続く。ノンフィクションライターの菅野朋子がその現状を明らかにする。
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「絶対に壊れないとされた鉄壁の数字を下回ったことは、支持者すら大統領から離れたことを表している」(韓国全国紙記者)
任期5年の折り返しの年に入った朴槿恵大統領の支持率が1月末、29%に落ち込んだ。“鉄壁”といわれる支持層である不動の保守派30~40%を割り込んだ格好で、レームダック(死に体)も囁かれ始めた。
だが、皮肉にも朴大統領の危機を救う一大事が起こった。3月5日、マーク・リッパート駐韓米国大使が公衆の面前で襲われる事件が起き、大使は顔や腕に80針を縫う深い傷を負った。
事件後、保守派から北朝鮮関係説が飛び出すと、進歩系はこれに反発して保守派勢力の陰謀論を持ち出した。すると、大統領の支持率は39%にまで回復した。
「これは、安保に敏感な保守派が結束したもの。これが持続するかどうかはわからない」(明知大学の金亨俊[キムヒョンジュン]教授)
ソウルに住む50代の会社員は言う。
「孤独な運動家が起こした、愚かなテロなのに、警備の不備を追及されるべきが不問にされて大統領はまたも責任逃れ。こんな事件が起きると必ず北朝鮮関係説や陰謀論が出て、保守vs.進歩のイデオロギー対立にすり替わる。韓国社会はいつまでたっても分裂を繰り返すばかりで、こうした“韓国病”にはうんざりする」
就任1年目の2013年には、北朝鮮への原則を貫いた対応やG20、訪越などの外交が評価され、一時は60%を超える支持があった朴大統領だが、それが崩れ始めたのは、今も記憶に生々しい昨年4月に起きた旅客船セウォル号の沈没事故からだ。