廃炉決定が続く日本の原発。しかし、ジャーナリストの田原総一朗氏は、その先にある原発の総合戦略を持っていない政府のいい加減さを指摘する。
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関西電力が3月17日に、運転開始から40年を超えた美浜原発1、2号機の廃炉を決めた。この日、日本原子力発電も敦賀原発1号機の廃炉を決め、18日には、九州電力玄海原発の1号機、そして中国電力島根原発の1号機も廃炉を決めた。
もっとも、運転開始から40年前後の関西電力の高浜原発1、2号機と美浜原発の3号機は、原子力規制委員会に安全対策の審査を申請している。この3基については、40年を超えても運転を続けるつもりなのだ。
政府は原発の40年廃炉を決めているが、これは東京電力福島第一原発が深刻な事故を起こしたことを受けて当時の民主党政権が決めたもので、技術的な根拠はない。
自民党政権もそれを受け継いではいるのだが、ホンネでは理不尽だと思っている。だから関西電力などが、採算がとれる大型炉は40年を超えても運転を続けようとしているのである。
私が指摘したいのは、政府がタテマエとホンネを使い分けていること、というより、はっきり言えば原発の総合戦略を持っていなくて、場当たり的に取り繕っている無責任さを何とかせよと言いたいのである。
たとえば、原発は廃炉にすればそれで終わりにはならない。厄介なのは使用済み核燃料の処分である。
だが、たとえ原発を止めたとしても、すでに日本には使用済み核燃料が1万7千トンたまっているのである。これをどうやって処分すればよいのか。小泉元首相は、この問題については発言していない。
00年10月、使用済み核燃料を最終処分するために、原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立された。07年には、最終処分場候補地として、高知県東洋町の町長が手を挙げたのだが、東洋町の住民などの反対で撤回され、その後どこからも手が挙がらないままである。NUMOが現在、具体的にどんな活動を行っているのかも国民はさっぱりわからない。
つまり、原子炉を廃炉にしても使用済み核燃料をどうするのか、まったく見当がついていないのである。原発はスタートした時点から「トイレのないマンション」だと称されていたが、現在もそのままで、トイレづくりに動いている様子もない。
総合戦略のなさの見本が、昨年4月に政府が発表した「エネルギー基本計画」だ。
エネルギー基本計画ならば、当然ながら総電力の内訳、つまり原発、石炭、石油、液化天然ガス(LNG)、そして太陽光や風力、地熱など再生可能エネルギーをそれぞれ何%にするのか示さなければならないはずだが、基本計画と言いながらそれらの具体的な数字が全く入っていないのである。
実は、非公式の形では数字は出されていて、30年に原発は20~25%となっているのだが、これを公表すると大きな問題になってしまう。40年廃炉制度だと、原発をすべて再稼働させても30年に15%にも達しないため、40年以上運転させるか、原発を新設しなければならないのである。
※週刊朝日 2015年4月3日号