今年も1年に1度といえる“ボーナス”のシーズンが近づいてきた。
多くの上場企業は、稼いだ利益の一部を配当として、期末(もしくは半期)決算ごとに株主へ還元している。日本では3月を1年間の期末とする企業が圧倒的に多く、その時点で株を保有していれば、もれなく配当がもらえる。
配当利回り3%以上で、比較的知名度が高く、中長期的な保有に適した銘柄を投資情報サイト「株マップドットコム」を運営するクォンツ・リサーチ代表取締役社長の西村公佑さんに選んでもらった。
その結果が下の表[1]だ。これらはほとんど事業内容について説明無用だろう。キヤノン、三井物産、兼松エレクトロニクスはいずれも業績堅調で3%を超えている。キヤノンは12月決算だが、円安を好感して株価が上昇する可能性もあり、今から仕込むのも妙味ありだ。
さて、最後はとことん欲を出してみることにしよう。ここまでは高利回りの配当だけに着目してきたが、同時に株価の上昇も期待できるとなれば、まさしく“一石二鳥”となる。
岡三証券投資戦略部ストラテジストの小川佳紀さんにこのお題目で銘柄選びを依頼したら、次のような返事が戻ってきた。
「ならば、JPX日経400の算出対象となっている銘柄の中で、配当利回りが2.5%以上に達しているものから選びましょう」
JPX日経インデックス400とは、東京証券取引所と日本経済新聞社が共同開発した新たな平均株価指数で、その算出に用いる銘柄を選ぶ際にはいくつかの基準が定められており、それらを満たす必要がある。ある意味、優等生的な銘柄が選ばれるようになっているのだ。小川さんはこう続ける。
「ROE(株主資本利益率)と呼ばれる経営指標に関しても基準が設けられていますが、実は意外な盲点があります。3年間の平均値をもとに選別しているため、足元でROEが低くなっている銘柄も含まれているのです」
ROEとは、株主が出資した資金を元手にどれだけ稼いでいるのかを示す指標だ。これが低いほど、経営が下手だということになる。足元でこの数値が低下している企業は、そのまま放置していると株主から批判されるばかりか、JPX日経400の算出対象から除外される恐れもある。つまり、なんとかしてROEを向上しようとシリに火がついている状態だ。
「そこで、配当利回り2.5%以上のJPX日経400採用銘柄の中でも、際立ってROEが低いもののなかから7銘柄を選びました。それをまとめたのが下の表[2]です。これらはROEの向上に努め、株主還元策も重視する可能性が高く、そのような動きが見られれば、株価の上昇も期待できるでしょう」(小川さん)
いわば、企業努力を期待しての“先回り買い”。努力でさらに業績が改善すればおのずと株価も上がることになる。すぐに結果が出ることは望めないが、配当を受け取りつつ、中長期に投資するのに向いているという。
小川さんは、国内製薬最大手の武田薬品工業、ゴルフ場運営のアコーディア・ゴルフ、パチンコ機のSANKYO、ナイロンで世界的にシェアの高い宇部興産などに注目しているという。
“ボーナス”を獲得するための締め切りは間もなく。だが、投資はくれぐれも自己責任で。
[1] 西村さんが注目する 「中長期保有にぴったり」銘柄
証券コード/銘柄名/株価(円)/配当利回り(%)/事業内容
7751/キヤノン(12月決算)/3889/3.86/カメラ、事務機器の世界的大手で、医療機器も手掛ける
8031/三井物産/1662.5/3.85/三菱商事とともに、大手総合商社の双璧。株主重視の経営
8096/兼松エレクトロニクス/1779/3.37/大手商社・兼松傘下のITベンダーでシステム開発などを手掛ける
[2] 小川さんが注目する 「株価上昇が期待できる」銘柄
証券コード/銘柄名/株価(円)/配当利回り(%)/事業内容
4568/第一三共/1872/3.21/循環器や感染症関連を得意とする国内3番手の製薬会社
2768/双日/183/2.73/旧日商岩井と旧ニチメンが経営統合して誕生した総合商社。航空機に強い
4061/電気化学工業/466/2.58/工業に広く用いられるカーバイドで国内トップのシェアを誇っている
4502/武田薬品工業/6123/2.94/国内製薬の最大手で、M&Aを活用して海外の同業他社を傘下に
2131/アコーディア・ゴルフ/1182/3.47/ゴルフ場やレストランの運営、ゴルフ用品の販売などを展開
6417/SANKYO/4510/3.33/パチンコ機の大手メーカーで、フィーバー台の大ヒットで知られる
4208/宇部興産/195/2.56/機械、セメント、化学と多方面に事業を展開し、ナイロンで世界的シェア
※2月27日時点
※週刊朝日 2015年3月13日号より抜粋