70年代の石油危機では生活必需品が枯渇した (c)朝日新聞社 @@写禁
70年代の石油危機では生活必需品が枯渇した (c)朝日新聞社 @@写禁

 日本にとっては、ガソリン価格などの値下がりで福音をもたらすように思える原油安。しかし、日本の経済成長に大きな被害を与えると専門家たちは指摘する。世界経済への影響はもちろんだが、日本固有の“リスク”も存在するのだ。それは日本銀行だ。

 原油が下がれば物価も下がる。そうすると、日銀が2015年度中に目指す「2%の物価目標」からいっそう遠ざかることになる。

「市場の観測では、今年の10月までにはやらざるをえないとみられている第3弾の量的金融緩和が、場合によっては4月に早まる可能性も出てきた。4月に第3弾をやると、10月にも第4弾をやらざるをえなくなる」(マーケットアナリストの豊島逸夫氏)

「黒田バズーカ」が年2回も連続して撃たれると、円はジャブジャブになり、過度に円安が進む可能性が出てくる。大企業はさらに儲かるかもしれないが、輸入物価がさらに上がり国民は地獄を見ることになる。“超円安貧乏”になるのだ。

 国内のあるヘッジファンド運用者は、「円安に歯止めがきかなくなる。1ドル=200円、300円と、想定できないほど円安が進んでもおかしくない」と危惧する。

 海外の投資家から、「日銀の国債買い入れは財政赤字の補填だ」と見られ始めれば、円は暴落し、ハイパーインフレも視野に入るという。日本経済にとって朗報のはずの原油安。手放しで喜んでばかりはいられない。

週刊朝日 2015年1月30日号より抜粋