父の代から続く渡辺王国が、崩壊の瀬戸際だ。

 化粧品会社会長からの8億円の借り入れ問題が発覚し、みんなの党の代表を辞任した渡辺喜美氏(62)。不祥事を発端に党は先月28日に解党し、渡辺氏は比例復活のない無所属での出馬となった。

 だが、無所属になったのはある思惑があるという。2009年に離党した自民党との“復縁”だ。

「喜美さんは安倍晋三首相と仲がよく、本音は自民党に戻りたい。8億円問題があるから復党は無理でしょうけど。当選すれば無所属の立場で、安倍政権に協力したいと考えているのでは」(元みんなの党関係者)

 渡辺氏自身も、復党や政権への協力について聞かれると「選挙の結果を見て判断します」と、その可能性をにじませる。

 とはいえ、現実は甘くない。自民党県連の幹部は、冷たく突き放す。

「私らは父親の美智雄さんの代からずっと渡辺親子を応援してきたのに、党から出ていった。今さら戻りたいと言われても無理」

 そもそも安倍首相にラブコールを届けるには、選挙に勝つことが前提だ。父から引き継いだ強固な地盤があるとはいえ、情勢調査では対立候補である自民党の簗和生氏(35)に追い上げられている。

 渡辺氏の思惑をよそに、選対幹部は「崖っぷち」と危機感をつのらせる。

「解党のときも地元に戻れず、有権者の心が離れている。小さな集会で説明していくしかない。不安ばかりですね……」

 選挙戦では、12年12月に離婚したまゆみ夫人もフル稼働中だ。今年4月の報道では、今は仲直りして事実婚状態だという。出陣式の演説では、涙ぐむ渡辺氏の隣で叫んだ。

「私たちはマイナスからのスタートです。ここからがスタートです!」

 復縁を果たした渡辺夫妻は選挙に勝利し、自民党との“復縁”も勝ち取れるのか。まゆみ夫人は演説会で支持者を見つけると、駆け足で近寄ってこう訴えた。

「私、乗り越えてみせるから! 栃木の女は強いのよ!」

(本誌・西岡千史)

週刊朝日 2014年12月19日号