11月16日に投開票が行われた沖縄知事選。争点となった米軍普天間飛行場の移設問題はどうなるのか。ジャーナリストの田原総一朗氏は悲観的に予測をする。
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沖縄県知事選が11月16日に投開票され、前那覇市長の翁長雄志氏が現職の仲井真弘多氏を破り当選した。
最大の争点は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の是非だった。1月の名護市長選、9月の同市議選、そして知事選も移設反対派が制したことで、地元の民意は決定的になったわけだ。
こうした選挙結果について、17日の読売新聞は、社説で「辺野古移設を停滞させるな」という見出しを掲げ、「移設予定地は市街地から遠く、騒音や事故の危険性が現状に比べて格段に小さい。沖縄全体の基地負担を大幅に軽減しつつ、米軍の抑止力も維持するうえで、最も現実的な方法なのは間違いない」と主張する。
さらに、「今回、(翁長氏が)『新辺野古基地は絶対に造らせない』と訴えながら、具体的な代替案を示さなかったのは責任ある態度ではない」と、批判している。
産経新聞の社説は「政府は粛々と移設前進を」という見出しを掲げ、「日米合意に基づく普天間移設は、抑止力維持の観点から不可欠であり、見直すことはできない。政府は移設工事を粛々と進めなければならない」と論じ、「新知事が(埋め立ての)承認をほごにするようなことは、法的秩序を混乱させるものであり、認められない」と強調している。
それに対して朝日新聞は「辺野古移設は白紙に戻せ」という見出しを掲げて「前那覇市長で保守系の翁長氏は『イデオロギーでなく沖縄のアイデンティティーを大切に』と訴え、保守の一部と革新との大同団結を実現した。とかく『保革』という対立構図でとらえられがちだった沖縄の政治に起きた新しい動きだ」ととらえ、「明白になった沖縄の民意をないがしろにすれば、本土との亀裂はさらに深まる。地元の理解を失って、安定した安全保障政策が成り立つはずもない」と論じている。
毎日新聞の社説の見出しも「白紙に戻して再交渉を」である。「ここまで問題がこじれた以上、現行の移設計画に固執するのは現実的ではない」と記しながら、「ただし、辺野古の白紙化を普天間の固定化につなげてはならない」という。「普天間返還合意から18年。日本と合意を重ねてきた米国との再交渉に持ち込むのは容易ではなかろう。それでも沖縄の民意がもたらす深刻な影響を日米両政府が共有すれば、おのずと協議は新たな段階に移っていくはずだ」と主張する。
朝日新聞も「政府は米国との協議を急ぎ、代替策を探るべきだ」と指摘している。
確かに、政府が今回の選挙結果を無視して移設を強行すれば、本土と沖縄の溝はますます深まり、その亀裂は決定的になりかねない。
だが、米国との再交渉というのは、普天間基地を沖縄以外の場所、はっきり言えば、グアムなど米国領に移設することである。そして2009年に民主党の鳩山政権は、その交渉から始まって、「最低でも県外」ということになり、迷走の末に、辺野古移設に逆戻りしたのであった。普天間基地を米国領に移設するという米国との交渉は、成功しなかったわけだ。
朝日新聞や毎日新聞の主張には私も同意したいのだが、民主党政権で成功しなかったことが、果たして自民党政権で成功するという可能性があるのだろうか。再交渉ということで、結果として普天間の固定化になりはしないだろうか。
※週刊朝日 2014年12月5日号