これが現在のソニーの抱える病理そのものなのである。むしろ同じソニーのウエアラブルでもスマートテニスセンサーのような、テニスのラケットにつけてすぐに使えて、スマホアプリでショット分析ができるシンプルでオリジナルのプロダクトのほうがイケてると感じる。
レンズスタイルカメラの「DSC―QX100」のような、レンズをWi―Fiでつないで、スマホアプリをファインダー代わりに使うようなオリジナルで尖ったプロダクトをスピンオフさせ、外部資金も入れて機動力の高いベンチャーとして運営するほうがよっぽどうまくいくだろう。
今回のスマートアイグラスに関しては、元マイクロソフトのエンジニアである中島聡さんが興味深いことをおっしゃっていた。グーグルグラスのディベロッパーのなかには、プロスポーツ選手の視点で撮影した動画をプロ向けに販売するというビジネスを構築しつつある人たちがいるのだが、それが大きなビジネスになるかもしれないというのだ。
グーグルグラスは高価なので、普通の個人が衝動買いする値段とは到底言えない。しかし、カメラ機能だけが付いたスマートなサングラスくらいの大きさで、リーズナブルな価格なら、相当数が自己視点での撮影専用カメラデバイスとして購入する可能性がある。ソニーだったらQX100のWi―Fi転送技術を使ってペアリングしたスマートフォンに映像を飛ばして記録することも可能だろう。
そうした尖ったプロダクトが今は求められている。ソニーの中にはこういうプロダクトを簡単につくれてしまうくらいの技術者群とノウハウ、工場などのリソースが豊富にある。それを活用しきれていない体制こそが最大の問題なのだ。
※ 週刊朝日 2014年10月10日号