■経営不振が続くソニー
消費者向けが主な家電メーカーは、グローバルなプレーヤーにならないと経営が難しい局面に来ている。
日本国内の家電メーカーは次々と法人向け事業に舵を切った。日立や東芝、三菱電機もそうだ。重電のほうの事業をどんどん強化している。パナソニックも旧松下電工系の事業にシフトしていっている。家電だけじゃなく、法人向けのまだまだ利幅が大きく参入障壁が高い分野を攻めていこうとしているのである。
その背景には、台湾や中国の安価な労働力を背景とするEMS(電子機器の受託生産を行うサービス)業者の隆盛がある。大手のフォックスコン(台湾)などがアップルなどの電子機器設計メーカーから一括して製造を受託する構造である。
彼らは半完成品をもってプレゼンをして、販売する製品にあわせたチップ構成などをその場で組み替え、見積もりも出す。さらに最近のクラウドファンディングの動きがそれに拍車をかける。プロトタイプどころかCGレベルでスタートアップ資金を集めて発注をかけたら、数千億の売り上げに達するケースすら出てきている。
有名なのは中国の小米科技だ。EC(電子商取引)だけで数千万台を売るのだ。こういったメーカーと、ソニーのエレキ部門は戦わなければならない。さらにソフト事業を持っているため、ハード事業とのシナジーが取れないという、グローバル化、モバイル化時代に適応できない事業構造になっているのである。
ここまできたら分社化するなりして、それぞれの事業の特色を生かすべきだ。本体は金融・ソフトウェア事業とVC(ベンチャーキャピタル)的な持ち株会社となり、エレキ部門は、事業によっては中国企業などに株式の大半を持ってもらうべきだろう。
スマートフォン事業が一番悩ましいところだが、サムスンすら苦境に陥っている今、売却すべきかもしれない。残りは尖った家電を作る事業をVC的に支援するのが一番面白いと思う。
■第2次安倍改造内閣発足
石破氏が安倍政権の安全保障政策を批判したことから、地方創生相という、いわば閑職ともいえるポストにつけられてしまった。総裁選に向けては安倍氏が一歩リードというところか。
また党三役にも女性を起用したり、内閣改造でも女性閣僚が増える結果となり、女性票の取り込みにもかなり意識をしていると言えよう。原発再稼働問題やTPP問題など、課題は山積しているが、議席は衆参両院で重要法案を与党だけで通せる数を確保している。
なかなかこういうチャンスはないので、大胆な国政改革を行ってほしい。特に社会保障制度改革は待ったなしの状況だ。年金の受給年齢の引き上げのためには健康でずっと働ける環境づくりが欠かせない。これまで終身雇用制で企業がずっと面倒をみることになっていたが、起業を促すなどして働き口を自分でつくれるような体制が望ましい。重要政策が多いので、2、3年は安定飛行を続けてほしいものだ。
※ 週刊朝日 2014年9月19日号