STAP細胞論文の責任著者のひとりで理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)幹部の笹井芳樹氏(52)が小保方晴子氏(30)らに遺書を残し、自殺した。この事態に、理研改革委員長の岸輝雄(東大名誉教授)氏は「野依理事長の責任は重い」という。
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笹井氏の死は残念でなりません。笹井氏の調子が悪いという話は、間接的に聞いていました。それもあって、私たち改革委員会は6月に出した提言で、笹井氏と竹市雅俊CDBセンター長はSTAP問題の責任をとってすぐに役職を辞めるべきだと明記したのです。理研がそのとおり実行していたら、今ごろ笹井氏の研究室もなくなり、笹井氏は理研本部などに所属が移って環境も変わり、自殺という最悪の事態は防げたかもしれません。笹井氏自身、3月には辞めたいと周囲に漏らしていたそうですね。そのとき、引き留められるのを振り切ってでも辞めていれば、違う道が開けたのではないでしょうか。あれだけ優秀な人だから「来てほしい」というところがあるかもしれないし、海外の研究所に行ってもよかった。
改革委がもう一つ提言したのは、CDBの解体でした。CDBをつぶして小保方氏の問題は本部に一括して担当させ、神戸には新しいセンターをつくることを提案したのです。メディアからは「看板の書き換えに過ぎない」と批判されましたが、それでも、STAP問題をセンターの運営と分けて考えられるという利点はあったはずです。
ところが、私たちの提言は実行されなかった。「解体」という言葉にCDB幹部が激怒したとも聞きました。理研は提言を受けて独自のアクションプランを発表するといいますが、私たちには事前に何の説明もなく、身内に甘い内容のものが出るのではないかと心配していました。せっかく外部の委員会に提言を頼んだのだから、それを利用して、失敗したら「改革委の提言が悪かった」と言うくらいでよかった。それくらいのしたたかさもない理研は、やはりガバナンス能力が欠如している。
こうした事態を招いた理研の責任は重い。一連の提言は野依良治理事長が決断すればすぐに実行できたはずなのですが、あまりにも対応が遅かった。組織を守る気持ちはわかりますが、ある種の怠慢であり、謙虚さに欠けていたと感じざるをえません。もはや理事長も含めた幹部の退任まで考えないと、世間は納得しないのではないでしょうか。
※週刊朝日 2014年8月22日号