屋形船
屋形船

 新型コロナウイルスが日本に“上陸”して、まもなく3年がたつ。多くの業界が今もなお、その悪影響にあえいでいる。江戸時代から続く船遊び、東京名物の屋形船もまた、“存亡の危機”から抜け出せていない。

【写真】小グループ用の半個室テーブル席が好評の「船清」はこちら

「2020年の損失額は1億円を超え、大赤字でした。電話もメールも、次から次へとキャンセルばかり。廃業の文字も脳裏をよぎりました」

 こう話すのは、JR品川駅からほど近い船宿「船清」の女将・伊東陽子さんだ。

 今も耳に残っている一本の電話がある。20年2月13日、「利用客に感染者がいた」という保健所からの連絡だった。

「その1カ月ほど前、約70人の団体様の宴会をお受けしたのですが、『その中から新型コロナの感染者が出た』というのです。検査をしたところ、ウチの従業員からも陽性が確認されました。その宴会の3日前に中国人ツアー客の接客をしていたため、東京都は『中国客と接触していた』などと、あたかもウチが感染源であるかのように発表したのです」

 だが、そのツアー客の中に感染者がいないことが、後日わかった。

「今もなお、感染ルートは判明していません。3月12日の都議会で質問された小池百合子都知事は、『屋形船が発生源ではないことは明白』と答弁されましたが、後の祭り。せめて公式の場できちんと謝罪するべきなのに、知らん顔なのが許せません」(伊東さん)

次のページ