中国の食品汚染が、生活のさらに身近なところに迫ってきた。中国・上海の米国系食品加工工場でつくられたチキンナゲットに、使用期限が切れた肉が混ざっていた。マクドナルド、ファミリーマートのあの商品も。いったい、なぜこのようなことが起きるのか。
中国の食品問題に詳しく、『日本人を脅かす中国毒食品』(宝島社)という共著もある食品ジャーナリストの椎名玲さんは、こう説明する。
「水不足の中国では、食品を水で洗って奇麗にするという感覚があまりない。中華料理はたいてい強火で材料を加熱するため、中国では高温で加熱すれば殺菌されるという意識です」
油でジュッと揚げ、火がよく通った料理が、中華料理の醍醐味(だいごみ)ではあるのだが──。
「床に落ちた肉も、使用期限を過ぎた肉も加熱すれば殺菌される。むしろ食べ物を大切にしている、という受け止め。悪いことだという感覚はなかったと思います」
中国はタイとともに、日本に輸出される鶏肉の一大産地だ。毒ギョーザ事件など中国で食品問題が起こるたびに、輸入業者は中国産をタイ、ブラジル産などに切り替えてきた。
日本マクドナルドの鶏肉製品の総輸入量は約4万5千トン(2013年)。そのうち約4割の約1万7千トンを中国から、残る約6割をタイから輸入していた。今回の問題を受けて、すべてタイ産に切り替えるという。
ただ、人のうわさも七十五日。椎名氏は「そのうち中国産に戻るのが常です」と指摘する。その理由は、「食品添加物マジック」の集大成ともいえるファストフードのメニューにあるという。
「チキンナゲットなどは、味がなく身がやわらかい中国産ブロイラー肉を使わなければ作れないのです。日本の基準の2~3倍とも言われる大量の抗生物質とホルモン剤を投与して短期間で育てられる。全世界で同じ味を再現するには最適なのです」
確かに、身の締まった肉質の硬いチキンナゲットに出合ったことはない。
※週刊朝日 2014年8月8日号より抜粋