参加者は全員一人だけどツアーとして観光地を巡る。一人参加限定ツアーは近年、シニア層に特にニーズが高く、ブームになっている。
1997年からおひとり様参加限定ツアーを開始した旅行会社大手のクラブツーリズムによると、初年度は参加人数が約2千人だったが、2012年には約3万5千人にまで伸びた。
同社の一人参加限定ツアー企画担当者の佐久間直子さんに人気の理由を尋ねた。
「ツアーにすることで、一人旅のハードルが下がったことが一因だと思う。また、アクティブなシニア世代の方も増えていると感じる。夫や友人とは違う、一期一会の出会いだからこそ、家庭の悩みを話せたり、ストレス発散ができたりするようです」
14年に同社が発表した、50~60代の男女400人を対象に行った「旅行とシニアライフに関する意識調査」で、一人参加限定ツアーに関して尋ねたところ、約50%がその存在を認知。実際に参加した9割が「また参加したい」、未体験者の約半数が「参加してみたい」と回答し、圧倒的にリピート希望者が多いという。
さらに同意識調査で消費増税後も節約したくないものの第1位に、約72%が旅行を挙げており、シニアの旅行に対する強いこだわりが表れていた。
「女ひとり旅読本」シリーズの編集者で旅行ライターの山田静さんはこう話す。
「全員が一人参加のツアーは、慎重な人には一人旅のよい練習になる。一人旅がしたい、一人になりたいという人は、本当に一人になりたいわけではなく、周囲のしがらみから一人になりたいということだと思う。まるっきり縁はないが、趣味が似ている人たちと一緒の旅は、むしろ楽しいと考えるのではないでしょうか」
お一人様ツアーは、国内だけではない。最近は海外でも一人で参加できるツアーが豊富だ。
「海外に出かけるアクティブなシニアの方も増えている」(クラブツーリズム広報担当・青木之さん)
クラブツーリズムは、国内外合わせて約1千コースを展開している。
(本誌・平井啓子)
※週刊朝日 2014年8月1日号より抜粋