日本維新の会の分裂を受け、民主党を巻き込んだ野党再編の機運が高まっている。維新への合流を進めているという結いの党の江田憲司代表(58)が、本誌へのインタビューに応じた。
――集団的自衛権について、結いの党は慎重な姿勢を示され、維新と違うのでは?
この点については、橋下さんと私とで散々議論しました。橋下さんたちは「集団的自衛権の限定容認」で、我々は「従来の個別的自衛権の解釈の適正化」でと言っています。これまで軍事の現場を知らない内閣法制局が、かなり杓子定規な現実離れした解釈をしてきたことも事実ですから、我々はそれを補正する、すなわち解釈の適正化で対応できるのではと。確かに自衛権の概念整理の仕方は違いますが、安保法制懇や、今、政府が与党協議の場に出している15事例についていえば、そのケースごとの自衛隊のオペレーション、具体的対応はあまり変わらないねということで一致しています。
――石原代表とも一度、協議されていますよね。
石原さんが「江田と会ったことがない、ない」とおっしゃっていて、橋下さんからもぜひ一度会ってほしいという要請があったので4月にお会いしました。そのとき、石原さんは、自分は米軍に機銃掃射を2度受けたこともあるし、東京裁判を傍聴したこともあると。今の憲法は米国の押しつけで、自主憲法を制定して、ちゃんと日本の自立自尊を守っていかなければと。この自分のセンチメントを維新の中で共有したいんだとおっしゃっていました。私からは、現行憲法が戦後果たしてきた役割をまずは率直に評価してくださいよと。その上で、憲法も不磨の大典ではないので、時代の要請に応じて改正していくのは当然でしょうとお伝えしました。ただし、維新もうちも、一院制とか首相公選制、道州制といった「統治機構改憲」ですよと申し上げました。
――集団的自衛権は何と?
平沼(赳夫・日本維新の会代表代行)さんが、「限定容認の6要件を出したので、検討してくれますか」とおっしゃったので、検討いたしますと。和気あいあいと終わり、石原さんが、あんまりソファが深すぎて立ち上がれないので、私が抱き起こして、にこやかに握手して終わったんですけどね。
――石原さんは分党決定前から浅尾(慶一郎)・みんなの党代表らみんなの党幹部を呼び、一緒にやろうと誘っていたという情報もあります。
それは知りませんが、今のみんなの党の最大の問題はどっちつかずというところですよ。与党化するのか、野党再編に身を投じるのか。八方美人でリスクを取ろうとしないというか。それぞれの議員は思い悩んでおられると思うので、信念の下に行動されることを期待していますけど……。
――海江田(万里・民主党代表)さんは、6日の会談で何と?
安倍政権と対峠する政策の軸などをお話しさせていただきました。選挙協力というのは、時期尚早で、まずは政策のすり合わせを優先することで一致しました。
――民主党が分裂すれば、その一部の議員と連携を考えていらっしゃる?
いやいや分裂なんて……。大事なことは、民主党が、特に基本政策において変わるのか変わらないのか、そして我々のように、野党再編を積極的に進めていくのかどうかですよ。この「一強多弱」と言われる政治状況の中で、ふがいない野党でいることをよしとしないのであれば、政治理念とか基本政策の一致は当然の前提として、積極的に再編に踏み出すのかどうかを問いたい。私がみんなの党にいたとき、民主党というのは、「官僚主導で増税ばらまき分配重視の大きな政府」で、我々は「民間主導で地域が主役の活力成長重視の小さな政府」だと言っていたんですよ。真逆でしょ。だが、政権を降りられて、聞くところによると、基本政策の見直しもされているというので、変わられるのか否かをまず確かめたい。その上で民主党のままでいくのか? 自民党に対抗しうる政権交代可能な一大勢力をつくる気はありますか?と伺ったんです。
――前原さんとは、すでにお話はされているんですか。
前原さんとは、問題意識は共有していますよ。だけど、私としては、今は民主党とは全方位外交です。民主党執行部ともお付き合いするし、旧通産省時代の先輩である岡田克也さんとも情報交換してますし、前原さんや細野(豪志)さんたち再編積極派の人たちともお付き合いする。だって、これから民主党がどうなるかわからないじゃないですか(笑)。我々としては秋にかけての民主党の動きには大いに注目しています。
(本誌・平井啓子、森下香枝)
※週刊朝日 2014年6月20日号より抜粋