財政赤字が長期に渡って続く日本。消費税は8%に上がったが、安心できる状態になるのだろうか。モルガン銀行東京支店長などを務めた藤巻健史氏は、「まだまだ厳しい」と指摘する。

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 財政破綻やハイパーインフレが起きていないのは長期金利(10年満期の国債の金利が指標)が低位安定しているからだ。1017兆円(昨年末時点)もの借金を抱えている以上、長期金利が上昇し始めたら支払金利だけで財政はパンクだ。

 この低位安定は、誤解があるからだと思われる。

 それは多くの外国人が持っているもので、「日本政府には徴税権がある。税金を上げさえすれば財政は持つ」という誤解だ。8%に上げたところで、先進国では断トツに低い消費税であるから、こういう幻想もおかしくない。消費税を上げなければ、その幻想が打ち砕かれるリスクがあった。ひとまずは回避できたが、再度10%に上げるか決断するときが、また問題だ。

 3月13日に開かれた参院予算委員会の公聴会で、早稲田大学の原田泰教授は「社会保障の上昇を全部消費税で賄うとなると、2060年までに消費税率を36.6%上げなければならない」と言った。その4日後の財政金融委員会で麻生太郎財務相は、財政について「絶望感は持ちませんけど、危機感は持って臨んでいかねばならない」と答弁している。

「消費税が8%に上がった。やれやれ財政はもう大丈夫だ」と思い込んではならない。財政はいまだ厳しい。「ばらまき」を今後とも監視していかねばならない。

週刊朝日  2014年4月11日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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