かっぽう着の研究スタイルで話題になった小保方晴子さん (c)朝日新聞社 @@写禁
かっぽう着の研究スタイルで話題になった小保方晴子さん (c)朝日新聞社 @@写禁
この記事の写真をすべて見る

 世紀の大発見と一躍注目されたものの、その論文についていくつもの疑惑が出ている科学者・小保方晴子さん。朝日新聞科学医療部の鍛治信太郎記者は「忘れたでは許されない」という。

*  *  *

 画像を取り違えたという小保方さんの言い訳に、3月14日の会見で理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の竹市雅俊センター長は「客観的にみてレアなケース」。野依良治理事長は「データの極めてずさんな取り扱いがあった。あってはならないこと」。

 他人の論文の実験手法のコピーは、同じく理系の実験をしていた身にとっては、不思議でしょうがない。論文は、「誰もやっていないこと=自分が初めてやったこと」を書くのが目的。そのために「誰かがすでにやっている実験方法」の記載が必要でも、字数制限もあるから出典を明記して、「詳しくはその論文を見てください」と省略するのが普通だ。わざわざ多くの文章をコピーする理由が常識では思いつかない。「天然ぶり」で報道陣を魅了した小保方さんだが、引用の出典は「書き忘れた」では許されない。

 画像の切り張りも、する前のデータをそのまま出せば問題がなかったと石井俊輔調査委員長は言う。「きれいに見せたかった」からやったそうだ。こうなると、「ずさん」というより「ポップ」だ。

 感じたのはコピペに対する意識の差だ。記者は、この便利な技を知ったのが社会人になってから。やっていいコピペといけないコピペの区別は厳密につくつもりだ。だが、子供の時から技だけを先に覚えてしまったら、その区別が難しくなるのではないか。個人的感想だが、事件の背景を読み解く鍵になる気がする。

 問題は、なぜこれほどの不備・不適切を事前に避けられなかったのか。笹井芳樹副センター長ら共著者の責任は重い。今回の論文は、得意分野で超一流の知識と技術を持つ研究者が集まっていたが、自分の担当する部分については絶対の確信があっても、全体を見通せる人物がいなかったのではないか。

 調査委の目的は論文に不正があったかどうかを調べることで、STAP細胞が実在するかどうかについての真偽は問わないという。現在、共著者の丹羽仁史プロジェクトリーダーが再現に取り組んでいるが、まだ最初の段階だ。

 たとえできても、独立した第三者機関が再現できなければ証明にはならない。ここまで欠陥だらけの論文を追試してくれる奇特な機関があるのだろうか。
 
週刊朝日  2014年3月28日号

暮らしとモノ班 for promotion
台風シーズン目前、水害・地震など天災に備えよう!仮設・簡易トイレのおすすめ14選