世紀の大発見を成し遂げた若き女性科学者として一躍有名になった小保方(おぼかた)晴子さん。いちいちおもしろい天然の受け答えに、「スター誕生」と感じた朝日新聞科学医療部記者の鍛治信太郎氏だったが、次々と明らかになる論文のずさんさは、もはや「天然」ではすまされないと、この騒動についてリポートする。
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前代未聞の事態に、理化学研究所は「調査の中間報告」として、3月14日に都内で記者会見を開いた。
前回1月末の記者会見は、ほぼ科学系の記者だけだったが、今回は、ワイドショー、週刊誌、ネットメディアなども殺到し、会見の始まる2時間前から席取りの列ができるような騒ぎ。だが、意外だったのは、追及はするが、つるし上げや糾弾という雰囲気があまりなかったことだ。
一番最初の質問はフジテレビで、「小保方さんは、今どちらで何をしているんですか?」と相変わらずの人気ぶり。「不正よりそっちが先か」と少し頭痛がした。ちなみに、小保方さんは、調査委員会の聞き取りを3回受けたが、現在は精神状態がよくないことなどから出勤していないという。
石井俊輔調査委員長は、STAP論文の疑問点として挙げられた6つのうち、「酷似していると指摘されていたネイチャーと博士論文の画像が同一であること」「実験データの画像に二つの実験の画像を切り張りしたものがあること」「実験手法の記述で他人の論文からほとんど内容を変えずにコピぺしたものがあること」、などを認定したと明言。
調査委に対し、小保方さんは「(切り張りを)やってはいけないという認識がなかった」「(コピーは)出典を書き忘れたが、どこから引用したか覚えていない」などと答えたという。
今後、調査委は悪質な意図を持った捏造(ねつぞう)などではないかなどを調べ、不正があったかどうかの結論を出す。だが、会見に臨んだ幹部たちは、「悪意がなかったとしても極めて不適切」と口をそろえた。川合真紀理事は、「切り張りすること自体が研究者の倫理に反する」「間違ったものを載せてしばらく気づかないのは常道を逸している」。
※週刊朝日 2014年3月28日号