アダルトグッズの祭典「PINK TOKYO」に参加した文筆家の北原みのり氏。そこで見た男性たちの行動にますます謎が深まったという。

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 週末はPINK TOKYOという、アダルトグッズの展示会に参加した。この手の展示会はドイツやアメリカ、中国などでは年に数度行われているのだけれど、日本では今回で2回目。しかも7年ぶりだ。

 それにしても7年前と今では、アダルト業界も様変わりしたように見えた。例えば7年前には会場にいて、今回いなかった人たちがいる。熟女系のAV女優たちや、レースクイーン系のセクシーな女性たちだ。

 会場には、かわいらしいアイドルたちがたくさんいた。ステージの上で「お兄ちゃん~」と切ない声で会場に呼びかけるような声優や、ブルマーはいて踊るグループとか。

 ゴージャスなカラダで、高いヒールを履く、超美人なレースクイーンなんて、今の若い男たちは求めていないのかも。さらに私が驚いたのは、「お兄ちゃん~」と呼ばれて喜ぶようなロリコン男たちは一目で見てわかるような「気持ち悪さ」を放っているに違いない、という偏見が全く当てはまらないということ。

 ファンサービスなのか、アイドルや女優たちはファンの男性たちを引き連れるように会場を歩いていた。中には、私たちのブースに立ち寄った女性たちもいた。するとバイブやローションを手に取ったり、女性どうしで「これ、どうやって使うのかなぁ」と話しあう女性たちを、ファンの男たちが遠巻きにニコニコしながら見つめているのである。

 その様子からは、全くといってよいほどエロな空気は漂っていなかった。貪欲で切実な性欲の発露などみじんもなく、むしろ、子供の運動会に来ている父親のように、温かい視線で遠巻きに彼女たちを見つめているのである。30代~50代が中心だ。

 オタクと言えば、紙袋を両手に髪の毛が汚くのびている、という私の偏見は、完全に過去のものになった。そんな人、一人もいなかった。フツーのお父さんっぽいフツーの男たちが、日常的に愛でるものを愛でている、というような雰囲気で、ロリコンアイドルを愛でているのだ。しかし……いったい何故? 男の「性欲」についての謎は、最近、ますます深まりつつある。

週刊朝日  2014年3月21日号