ソチ五輪フィギュアスケート女子で6位入賞した浅田真央(23)=中京大=。ノンフィクションライターの田村明子氏は浅田真央を人間性が愛される希有な選手だという。
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フィギュアスケートは全人格が出る競技だと言われます。ソチ五輪の演技でも、浅田選手からにじみ出る「人格」が滑りに表れていました。だからこそ、見る人をあれだけ感動させられたのだろうと思います。
ジュニア時代から浅田選手を取材していますが、彼女が人に対して批判的なことを言ったり、失礼な態度を取ったのを見たことがありません。試合の結果が悪くても、記者の質問にはきちんと答え、決して嫌な顔をしません。
それに彼女は生真面目で、練習も手を抜くことができない。コーチが「やめなさい」と言うまでずっと練習し続けてしまう。持ち前の才能と高い技術だけでなく、そんなひたむきさが人を惹きつけるのでしょう。
金妍児(キム・ヨナ)選手は演技力に定評がありますが、彼女は違う人格を演じるのが上手なタイプ。「007」を踊ったらボンド・ガールになりきってしまう。でも、浅田選手は何の音楽で踊っても、「浅田真央」以外の何者でもない。芯が強く、可憐で品がある「浅田真央」をみせてくれるんです。母の匡子(きょうこ)さんが私に言った印象的な言葉があります。
「フィギュアスケートは勝った、負けたではないと思うんです。生き様をどう氷の上でみせるか。それがフィギュアではないですか」
浅田選手はソチで、まさに「生き様」を私たちにみせてくれました。これほど万人に愛されるスケーターは、しばらく現れないのではないでしょうか。
※週刊朝日 2014年3月7日号