中国政府がお金の出し手ともいわれる投資ファンド「SSBT OD05 オムニバス アカウント・トリーティ」が、昨年から大量の「日本株売り」を開始している。
「OD05」の調査・分析を続けるちばぎん証券の安藤富士男顧問によれば、昨年3月末の時点では、確認できたもので投資先が175社、時価総額が約4兆2447億円あった。それが半年後の同9月末には50社、約6409億円と約7分の1にまで激減している。
このファンドが日本企業の株式を大量保有し始めたのは2008年ごろ。会社名義はオーストラリア・シドニーにあったが、当時は同じ住所で似た名前のファンドに「チャイナ」という言葉が入っていたため、中国政府と関係があるのではと言われてきた。
だが、その実態はいまだ不明だ。投資先は、上場会社の情報開示のひとつ、有価証券報告書の内容を細かく確認し、集計するしかない。それも大株主の上から10番目までしか公開されないので、それ以下の「少額投資」は把握できない。実際にはもっと多くの株式を保有していることは確実だ。
では、「OD05」はどのような投資行動をしているのか。主な投資先一覧を見ると、昨年は自動車メーカーや金融機関の株式を大量に売却したことが分かる。
一方、業界では「実態を隠すために、別のファンドに株式を移したのでは」という見方もある。RFSマネジメントの田代秀敏チーフエコノミストは、「昨年9月末、『OD05』と入れ替わるような形で、『BONYTJA』という信託名義が日本企業の大株主として登場しています。中国はステルス(見えにくい形)で日本企業への投資を増やしている」と分析する。
「OD05」は株主総会に出席せず、経営については何の発言もしない。消えた“中国マネー”の行方は、いまも謎に包まれている。
※週刊朝日 2014年3月7日号