池田清彦・早稲田大学教養学部教授は、以前から地球温暖化の問題に懐疑的な立場をとっているが、大勢の人が温暖化論を唱える背景には、こんな問題が横たわっているという。
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1月8日付の朝日新聞の一面トップに「温暖化で数億人移住必要」との見出しでIPCCの報告書案が大きく報じられていたが、ここのところ世界から伝わってくる気候に関するニュースは寒冷化の話ばかりだ。夏の南極海でロシア船が氷に阻まれて立ち往生し、それを助けに行った中国の砕氷船も動けなくなり、一週間以上かかってやっと脱出したとか、同じく南極で2010年8月に摂氏マイナス93.2度の観測史上最低気温を記録していたとか、あげくは、今冬、東アメリカは記録的な寒波に襲われ、シカゴでは一日の最高気温が摂氏マイナス24度だったとか、これでも温暖化と言い張るつもりなのかいといったニュースが多い。
寒波が襲ってくるのも、南極の氷が増えるのも、気温の年変動が極端になるのも、温暖化のせいだ、と主張する科学者もいるが、1997年以来、地球の平均気温は横ばいなのだから、何でもかんでも温暖化のせいにするのは「空があんなに青いのも、電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、みんなわたしが悪いのよ」といった昔流行った戯れ歌と選ぶところがない。
7万年前に始まり1万年前に終了した最終氷期も、現在より気温が高かった縄文時代も、17世紀後半をピークとする小氷期も、すべて人為的な原因で生じたわけではない。現在の気候変動のみが人為的な影響によるものだとの説は、普通の頭で合理的に考えればバカげた説であることは明らかだ。CO2は確かに温室効果ガスだが、その増大が気候変動の最大の要因であるというのは実証不能な仮説にすぎない。
それにもかかわらず、CO2の削減を絶対の正義のごとく言いつのるのは、これが結構な利権になってしまったからだ。いまさら、CO2増大による人為的地球温暖化はウソでした、とは言えないのだ。そうなると食うに困る人が出てくる。原発やめたら食うに困る人が出てくるのと同じ構図である。
はっきり言って、人為的温暖化論などはよし正しいとしても、人類にとっては瑣末な問題にすぎない。膨大な税金を使ってCO2をほんのわずか削減したところで人類は救えない。最大の問題はもちろん人口問題だ。温暖化するにしろ、寒冷化するにしろ、地球人口が100億を超えたら、食糧とエネルギーをめぐる国家間の軋轢(あつれき)は激しくなるだろう。それなのになぜ、人口を減らそうという主張はメジャーにならないのか。人口減少は何の利権にもならないからだ。そう考えれば、利権とは人類を滅ぼす悪魔の囁きかもしれないね。
※週刊朝日 2014年2月7日号