「小泉劇場」のリバイバル公演が始まった。
1月23日、JR渋谷駅のハチ公前に集まった聴衆は1千人近い。気温が下がり始めた午後3時過ぎに、細川氏に続いて“真打ち”が登場した。
「あの東北大震災、原発事故は、日本を変えるチャンスである。変えられるんだ。変えることができるのになぜ立ち上がらないんだっていう強い憤りの念が私の胸に燃えてきたんです」
小泉氏はときおり声を裏返し絶叫、早くもヒートアップしてきた。
「年をとっている。70過ぎている。私も細川さんも。しかしながら、やらなければならないことがあると思ったとき、年をとっていても老人ではない。若返るんですよ。使命感がある限り燃えるんですよ」
直前の細川氏が、身ぶり手ぶりのない“静”の演説だっただけに、“動”の小泉氏がより鮮烈に見える。右手を大きく動かすその姿は、ヘアスタイルとあいまって、まるでオーケストラの指揮者にも見える。
「引退して、本を読んだり、歌舞伎を観たり、音楽会に行くよりも、今燃えているんです」
少しおどけて言い、笑いをとった後、こう続けた。
「原発ゼロでも東京は発展できる。日本の最大のエネルギー消費地である東京が、原発ゼロでやっていけるならば、日本のエネルギー計画も変えることができると思うからです」
拍手がドッと沸き起こる。すでに聴衆の心をつかんでいるようだ。かたわらに立つ細川氏が、しきりに目をちり紙で拭う。小泉氏の演説に感動したのか、多くの観客を見て感極まって泣いているのだろうか。
「東京オリンピック・パラリンピックが原発ゼロでできるのか。無責任だ。そう言う人がいた。しかしながら、昨年、東京オリンピック招致委員会は、IOC(国際オリンピック委員会)に向かって、世界に向かって、原発なしでもオリンピックはできるといって宣伝してたんじゃないか。どっちが無責任だ。今、原発は1基も動いてないけど、何ともないじゃないですか」
拍手と「そうだー」の声が飛ぶ――。
この日の活動を終えた細川氏に、涙の訳を問うた。
「感極まるというより、寒くて鼻をかんだ、涙目になるし。いや、寒かったんですよ。本当に」
ともかく、「小泉劇場」の威力は今も十分だった。
※週刊朝日 2014年2月7日号