彗星イヤーとして話題になった昨年。地球に近づく途中で消滅してしまった「アイソン彗星」も記憶に新しいが、そもそもその彗星はどこから来るのか、作家の三浦しをんさんと国立天文台教授の小久保英一郎さんの対談講座で、そうした宇宙の素朴な疑問を解説した。
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小久保:「彗星はどこからくるの?」ですが、彗星といえば……。
三浦:赤い彗星!
小久保:ガンダムではそうですよね(笑)。でも最近はアイソン彗星。生き残っていたら、今ごろよく見えていたんですけどね。
三浦:あれはどうなっちゃったんですか?
小久保:太陽に近づきすぎてバラバラになって熱で蒸発してしまったんです。
三浦:そうなんだ。
小久保:彗星は実はだいたい同じ場所から来ています。太陽系のいちばん外側、地球と太陽の距離の数万倍くらいのところに、氷の微惑星が集まった「オールトの雲」という場所があって、そこから来るんですね。でもその微惑星たちはもともともっと内側、木星から海王星の辺りで46億年くらい前に生まれたと考えられています。微惑星の多くは太陽の周りを回りながら衝突、合体して大きな惑星に育っていく。でも惑星にならないで残っていた星が、大きくなった惑星の重力で外側に飛ばされてできたのがオールトの雲なんです。
三浦:太陽系のずいぶん外側まで引っ越しましたねえ。
小久保:その微惑星が、何らかの原因で太陽に向かう楕円の軌道に変化して彗星になる。彗星たちは46億年ぶりに故郷に帰ってきているわけです。
三浦:アイソン彗星、初めての里帰りだったのにと思うと切ないですね。
小久保:オールトの雲より近場、海王星の外側にも氷微惑星の団地があって、ハレー彗星はそこから来たといわれています。ハレー彗星は木星とかの魅力に負けて、団地に帰るのをやめちゃったんです。だから76年に1回くらい地球に近づいてくる。
三浦:なるほど。宇宙の単位で考えたら、しょっちゅう里帰りするっていうか、毎日実家に来やがる、みたいな感じですね。
※週刊朝日 2014年1月24日号