安部首相が出席した今年10月の日・ASEAN首脳会議 (c)朝日新聞社 @@写禁
安部首相が出席した今年10月の日・ASEAN首脳会議 (c)朝日新聞社 @@写禁
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 中国の一方的な防空識別圏の設定で、日中関係の政治的な対立は深まっているように見える。しかし、経済誌をはじめとしたメディアが報じるように日本企業の「脱中国依存」が加速するという見立ては「かなり乱暴な議論だ」と明治大学の関山健准教授(国際政治経済学)は話す。

 実際、こんなデータもある。日本貿易振興機構(ジェトロ)が今年8月、802社の日系企業を対象にしたアンケートでは、6割以上の企業が、中国でのビジネスを拡充する方針を示している。それに対して、中国でのビジネスの縮小や撤退を検討している企業は、7.7%しかなかった。

 さらに、縮小や撤退を検討する企業が理由にあげた項目をみると、「人件費などのコスト上昇」を半数以上の企業があげていた。反日デモなどの「政治や社会情勢の変化で企業が損失を被るリスク(カントリーリスク)」をあげた企業は3割程度しかない。

 なぜこのような結果が出るのか。財務省によると、日本の貿易相手国(輸出入総額)は、2006年度には、中国が米国を抜いてトップに立った。12年度の対中国の輸出入総額は、約26兆7千億円。全体の輸出入総額の2割を占めている。もはや日本経済にとって、中国は欠くことができない貿易相手だということがいえる。

 さらに、今後の見通しをみると、中国の消費市場としての魅力が高まるにつれて、進出する日系企業が増えると見込まれる。20年には、中国の市場規模は、現在の5倍の約1200兆円に膨らむと予想されている。こうした将来性を考えると、日系企業が中国市場から撤退することは得策ではないのだ。

 中国経済に詳しい、日本総合研究所の関辰一(しんいち)研究員はこんな分析をする。

「市場の規模だけではなく、中国市場での利益率が、日本に比べて高いという点も魅力のひとつです。自動車産業では、日本の経常利益率が3%なのに対して、中国では10%もあります」

 中国市場で売り上げを伸ばせば、日本で伸ばすよりも利益を多く積み上げられるなら、企業もその市場を無視できないだろう。

 たとえば、トヨタ自動車は13年1~10月の中国での販売台数が、前年同期比4.9%増の約72万台と増えている。

「トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどの自動車メーカーは中国での設備投資を増やしています。さらに、自動車部品メーカーの中国進出も活発になっています。消費市場として、やはり中国は魅力があるからです」(関氏)

週刊朝日  2013年12月13日号