開業100周年を迎えた能勢電鉄。記念事業としてつくられた“駅舎”は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を彷彿とさせる。
兵庫県の郊外をノンビリ走る能勢電鉄は、緑豊かな里山を通り抜け、能勢妙見山の麓までを結ぶ。「北極星入口駅」は、そこから、さらにケーブルカーで上った山の中にある。
現代美術アーティストの鈴木貴博さん(46)と能勢電鉄が共同制作した。天にのぼらんとする線路の向こう側には、夜になると、北極星が輝いていた。
「電鉄は、北極星をあがめる妙見信仰の参拝客をたくさん乗せてきた歴史があるんですよ。妙見山で、ロマンを感じる人が多いですね」(鈴木さん)
駅はアート作品であって、もちろん電車は走らない。それでもホームに立っているだけで、旅人気分に浸れる。時折、聞こえてくる鹿の鳴き声。見上げると満天の星。
「次は北極星~、北極星~」
そんなアナウンスが聞こえてきそうだ。
※週刊朝日 2013年12月13日号