グダタダの説明とズサンな借用証の公開で、5千万円問題の“幕引き”どころか、辞任を求める声を高めてしまった猪瀬直樹都知事(67)。とにかく地位にしがみつこうとする姿勢は批判を浴び、都議会も包囲網を狭めつつある。さらに知事にとって悩ましいのが都の規制だという。
都の処分の指針では、職員が「利害関係者」から借金することを禁じている。2002年には、都発注の電気工事を請け負ったことのある業者から無利息で99万円を借りた職員が懲戒免職なった。仮に利害関係者に借金を申し込んだだけでも、重い罰を受けるという。
都福祉保健局によると、都内には徳洲会グループの病院と老人保健施設が1カ所ずつあり、毎年、都から補助金が支出されている。徳洲会は立派な「利害関係者」だ。ただ、猪瀬知事が徳洲会からカネを借りたときは特別職の副知事だったため、職員の規則は適用されない。
都政に詳しい政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう指摘する。「組織はふつう、立場が上になれば責任も重くなります。免職レベルの失態をしながら責任を取らず、記者会見で 『信頼回復のため、粉骨砕身努力していく』と開き直るトップの姿を、職員たちはどう見ているのか。知事の求心力はますます低下していくのではないか」。
そんな落ち目の知事に対し、都議会の各会派も徳洲会との関係を調べるなど、追及の準備を進めている。
「12月5日に代表質問、6日に一般質問があり、ここが大きなヤマ場です。ただし、各会派ともなかなか追及の材料がそろっていないと聞きます。対する知事は問題発覚後に5回も記者会見をした“経験”がある。どんな質問ものらりくらりと対応するのではないか」(議会スタッフ)
共産党都議団は、関係者の出頭と証言、記録の提出を請求できる強力な「百条委員会」 の設置も求めている。仮に他会派の賛同を得て設置されると、12月13日の議会閉会後でも、知事や関係者を呼ぶことも可能だ。
ここで注目されるのは都議会最大会派の自民党の動向だ。共産党とタッグを組み、本気で知事を追い詰めるのかどうかだが、「猪瀬知事に対しては怒っていますが、辞職まで求めるかと言うと必ずしもそうではない。弱っている知事と逆に手を組み、やりたい政策をどんどん通させようと考えている議員も少なからずいます」(中堅都議)と、本気でクビを取ろうというムードではないのだ。
もっとも、東京地検特捜部の捜査の進展によっては、猪瀬知事の進退もどう転ぶかわからない。
※週刊朝日 2013年12月13日号