コラムニストや作詞家、ラジオパーソナリティーなどとして活躍するジェーン・スーさん(40)。彼女にはもうひとつ、「未婚のプロ」という肩書があり、彼女が今月出版したばかりの初めての著書『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)はすでに重版が決まるほどの人気ぶりだ。著書の内容は、スーさん自身のアラサー時代の悩みがもとになっているという。

 スーさんも、アラサーのころは揺れていた。

結婚して当然という空気は今よりも強かったし『結婚できないと女として欠損してるんじゃないか』『一人で生きていくのはみじめでさみしいんじゃないか』と不安もありました」

 そのころ、独身の女友達とよくファミレスに集まっていた。仕事の愚痴や恋の悩みを話しているうち、いつしか「なぜ、私たちはプロポーズされないのか」という話題になり、やや自嘲気味に思い当たる理由を書き連ねていくと、あっという間に100を超えた。

「『こりゃあプロポーズされんだろ!』とみんなで大爆笑し、大きなため息をつきました(笑)」(スーさん)

 このときのリストをベースにまとめたのが今回の本だ。101の理由から、いくつか紹介しょう。

・今の生活レベルを落とせない、という話をしたことがある。

 妻になる女には「4畳半の部屋でもふたりなら幸せ」と言われたいのが男心。スーさんは、かつて結婚を考えた男性から唐突に「だっておまえ、八王子には住めないだろ」と水を向けられたことがある。

「はあ?って感じでしたが、彼の収入から考えた現実的な居住地のたとえだったようで。なのに当時の私は、『文京区、千代田区、港区と渋谷区と中央区と新宿区の一部にしか住みたくない』とか言い放っておりました」

・彼が連れていってくれたレストランで、空調や店員の態度にケチをつける。

 男性の「女を喜ばせたい願望」は強烈。「青年マンガ誌では女の子が喜んで笑っている顔だけに1ページを割き、オッサン大衆誌では『このテクで女を悦ばせる』特集の嵐。あいつら女が喜んでんの本当に大好きなんですよ……」(著書から)。極端な話、セックスもレストランに連れていってくれるのも「喜ばせたい」という目的は一緒。プロポーズされたいなら、文句や注文は慎むべし。

 さらに著書の中でひときわ冴えるたとえがある。「結婚できない女は、剛腕ピッチャー」だ。結婚できる女たちは、いつか来るド直球のストライク=プロポーズをミットに収める日まで、どんな暴投も取りこぼさない。いわば名キャッチャーで、どこに投げたらいいかのサインもさりげなく出す。

対して、結婚できない女はえてしてピッチャーだ。しかも豪速球投手。「でも私たちは、それを誇りにも思っているんです。だからキャッチャーミットを構えてくれる男を選ぶのに、自分の都合や気分で『男のくせにどうしてピッチャーとしてちゃんと投げてこないんだ』とクレームをつけていた。完全なる自己矛盾です」。

 つまり男とはこうあるべきだ、という社会通念にツバを吐きながらも、実はその価値観は自分の中に深く根付いていた、と振り返る。スーさんが、このことにようやく気づいたのが38歳。同時に、結婚願望がないわけではないが、優先順位はずっと下とも気づいた。

週刊朝日  2013年11月1日号