幻覚や妄想という症状が特徴的な精神疾患・統合失調症。お笑いコンビ「松本ハウス」のハウス加賀谷さんはかつて統合失調症を患い、一時活動を休止。その後、入院などを経て症状を乗り越え、コンビ復活にまで至った。そんな加賀谷さんが『統合失調症がやってきた』(イースト・プレス)を出版。同じ症状を持つ人や、医学界からも注目されているという。相方の松本キックさんとともにその反響を明かした。
――反響はいかがですか?
松本キック:同じ統合失調症の患者さんやご家族の方から「共感する」というメッセージをいただいています。
加賀谷:精神科医のお医者さんからも「良い本ですね」とご感想いただくんですよ。
キック:日本統合失調症学会という大学教授や医療関係者が400人ぐらい集まっている前で、加賀谷が経験したことを講演させてもらいました。司会の方に「時間が余ったんでネタやりませんか」と言われたんですが、それはさすがにと思って(笑)、「次の機会にお願いします」と断って、楽屋に戻ったんです。そしたらまた司会の方が来られて「スタンドマイクがないので、ハンドマイク2本で大丈夫ですかね」って、いつの間にかやることに決めてきたんやと(笑)。しょうがないからやりましたよ。
加賀谷:でも「ホラー映画」という僕がウオーと叫ぶネタだったのがまずかった。
キック:加賀谷が叫ぶたびに何人かの先生がメモを取っているみたいなんですよ(笑)。なにかの症状かと(笑)。たぶんあれ、カルテですわ。
加賀谷:突然だったんで、後半「あわわ」となったらまたなんか書かれて(笑)。僕の持ち味なんですけれど。
キック:あんな視線味わったことなかったで。
加賀谷:僕は味わっていますよ、診察のときに。診察の雰囲気でした。
――お二人の出会いは91年、プロダクションのオーディションに同じ時期に合格されてからなんですね。
キック:初めて加賀谷を見たときは「なんだこいつ」と思いましたね。そわそわしていますし、付き人をしていてコーヒー買ってきて、と言われてもミルクティーばかり買ってきますし、事務所の用事を頼んでもずっと帰ってこないとか(笑)。遅刻も多かったですし。
――病気のことは知らなかったんですか。
キック:最初は加賀谷は全部(病気の情報を)クローズしてて隠していたんですよ。お互い漫才やりたい気持ちもあったので、軽い気待ちでコンビを組みました。変なところは個性でもありますから。でも、加賀谷は人をひきつける力と言葉のチョイスにいいものがありました。僕らの漫才は作ってきた台本を壊して舞台の上でまた作り上げていく形で、加賀谷は台本を超えてくるんですよ。こっちは「そうきたか」と、さらに上をいこうとする。そういう相乗効果があっておもしろい。
※週刊朝日 2013年10月25日号