高校生の鈴木沙彩さん(18)が、以前に交際していた無職池永チャールストーマス容疑者(21)からストーカー行為を受け、殺害されるという痛ましい事件が起きた。東京都三鷹市で起こったこの事件は、犯行の4日前と当日朝、家族や担任が警察に相談していたにも関わらず防ぐことができなかった。

 警察が動かない場合、親としては、いったいどうすればいいのだろうか。探偵社「プライベート・シャドー」代表の坂井利行さんは、「可能なら、即座に引っ越しをすることを勧めます」と言う。三鷹市の事件のように住所が知られていれば、いつ襲われるかわからない。警察への相談も、まずは避難して身の安全を確保してから、が鉄則だ。引っ越しするのが難しければ、自宅から離れた親戚や友人の家に一時避難するのでもいい。

 ただ、無事に転居した場合も安心するのはまだ早い。念のため、住民基本台帳の閲覧に制限をかけるようにしよう。加害者が配偶者の場合など、個人の住所などが記された住民基本台帳を市区町村の窓口で見ることができる。制限をかけるには、警察でつくった書面を市区町村に提出すればいい。

 通勤や通学のためにどうしても転居できない人もいるだろう。であれば、周囲の協力が不可欠だ。

「人けのない場所を一人で歩かせるなどもってのほかです。学校への送り迎えをしてもらうなど、常に誰かと一緒にいるようにしましょう。一人にしてはいけません」(坂井さん)

 四六時中、家族だけで守るのには限界がある。学校や勤務先にストーカーの存在を伝えて警戒態勢を取ることは必須。さらに、近所の住民の力も借りたいところだ。関西国際大の桐生正幸教授(犯罪心理学)は、「ストーカーの被害というのは他人にはとても話しづらい。しかし正直に相談して地域の協力を得られれば、より多くの目で監視でき、被害を未然に防げる可能性が高まります」と話す。

 最後は防犯グッズだ。最近では防犯ブザーを配布する自治体もあるが、深刻な状況で頼りになるのはブザーよりも強力な“武器”である。防犯グッズを専門に扱う「KSP」(福岡県福津市)は、ストーカー被害を受ける女性から相談を受けることがあるという。

「ブザーが鳴っても、誰かが駆けつけてくれるとは限りません。自らの身を守るため、最近多くの女性が購入されるのが催涙スプレーです。価格は6千円程度で、射程距離は無風で5メートル、風があっても3メートルほどになります。目に入ると3~4時間は見えなくなります」(店員)

 後ろから羽交い締めにされた場合などはスプレーは使いにくい。そんな場合にはスタンガンが威力を発揮する。価格は2万円程度。バッグにも入る、たばこの箱サイズのタイプが人気だという。物騒なものを娘に持たせたくない、という親心もあろうが、命には代えられないだろう。

週刊朝日 2013年10月25日号