会見で頭を下げるみずほ銀行の岡部副頭取(右)。「上司の失敗は部下の責任」と、貧乏くじを引かされたのか? (c)朝日新聞社 @@写禁
会見で頭を下げるみずほ銀行の岡部副頭取(右)。「上司の失敗は部下の責任」と、貧乏くじを引かされたのか? (c)朝日新聞社 @@写禁
この記事の写真をすべて見る

 みずほ銀行はグループの信販会社オリエントコーポレーションを通じた暴力団関係者への融資を2年間も放置、そして金融庁に業務改善命令を出された。この問題は銀行の懲りない体質を改めて明るみに出した。

 昨年12月の金融庁の指摘から半年以上もたつのに、当時の責任者の聴取すらしていないという。お粗末すぎる対応に、別のメガバンク幹部はこう首をかしげる。

「反社会的勢力に融資していることがわかったら、ただちに返済に向けた交渉に入るのが業界の常識ですよ。取締役会で議題にするほどでなくても、少なくともトップの耳には入れておくと思うけどなあ」

 こうした風通しの悪さは、内部の派閥対立にも起因しているとの声がある。みずほ銀行は、2002年に第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行を再編して誕生し、今年7月にみずほコーポレート銀行と合併するという複雑な経緯をたどった。各行出身者が熾烈(しれつ)な権力争いを繰り広げてきたとされる。02年の誕生直後にATM(現金自動出入機)網が大規模なシステム障害を起こした際も、旧3行の連携の悪さも一因とされた。

 楽天証券経済研究所の山崎元・客員研究員がこう指摘する。

「法人相手の融資をしてきた興銀出身者にしたら、『おれたちは、自転車で小口の預金を集めて回っていたようなやつらとは違う』というプライドがある。一方、富士や一勧の出身者は人数が多く、『興銀を救済するために合併してやったんだ』という意識。互いに譲らず、勢力争いが固定化してしまっているのではないか」

 今回の件では、問題が発覚した10年当時、副頭取、オリコの会長と社長が一勧出身だった。この「同窓」の間だけで情報が止まり、富士出身の頭取には話が回らなかった……と解釈すると、うなずけるだろうか。誕生から10年たっても終わらない「骨肉の争い」が情報共有を阻み、不祥事につながったのだとしたら、あまりにも情けない。

週刊朝日 2013年10月18日号