われらが「サラリーマン」、島耕作(65)が、社長から会長に就任した。作者の弘兼憲史さん(65)と弘兼さんの幼なじみでもある隅修三・東京海上ホールディングス会長(66)に「会長の心得」を聞く。
隅:今日は会長になった島耕作さんに、今後、何をやらせるのか、参考にしようという対談ですか?
弘兼:もちろん(笑)。今まで常に、僕の幼なじみの隅君が昇進した後に、島耕作も昇進してきた。だから二人は何かと並び称されてきたんだけど、今回は初めて勝ったと思っていたんです。ところが掲載日の関係で、やっぱり隅君に先を越され、また負けた(笑)。
隅:はい(笑)。でも島さんは5月の株主総会で会長になられましたね。私は6月の終わりに会長になったから、島さんのほうが会長として先輩なんですよ。
弘兼:実は、隅君と僕は、山口県岩国市の高水高校付属中学校という私立の中学校の同級生で、同じクラスになったこともあった。だからよく覚えているけど、まさに隅君は12歳の時に実家を離れたよね。隅君のサラリーマンとしての人生を見ていると、「自立」ということが大きなキーワードになっていると感じます。
隅:家が遠くて中学まで通えなかったから、農家の納屋の2階に下宿をしていました。でも私は6人の男兄弟の末っ子だから、甘えっ子になっちゃいかんということで本当は追い出されたのかもしれません(笑)。
弘兼:洗濯とかも自分でやってたんですか?
隅:洗濯も掃除も自分でやりました。ホームシックになって泣いたこともありましたけど、まぁ、結論はね、子どもは早く親元を離れたほうがいいということ。離れていると親のありがたさがよくわかる。今の若者はいつまでも親元にいるからいけません。
弘兼:島耕作も悩んできたのが人材育成です。隅君独自の、人材育成のポリシーはありますか? やっぱり、「自立」が大きな要素でしょうか。
隅:やっぱり、私は自立した大人であってほしいし、そういう人を採用したいですね。大人っていうのは、酒を飲んでたばこを吸ってじゃなくて、バランスを見ながら、同時に自分の考え方をしっかり持っている人をいう。私は若いころから海外の仕事に携わることが多かったので、日本の若い人は甘やかされているなぁと、つくづく思います。
※週刊朝日 2013年9月13日号