日本航空の名誉会長となり、経営を持ち直したことで注目されている稲盛和夫氏。敏腕として知られる同氏だが、実は母親に強い思いを抱いていることを明かした。

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問:瀬戸内寂聴さんとの対談の中で、寝る前など「意識しないうちに、つい『お母さん』と言っている」とおっしゃっていました。なぜでしょうか?

答:「お母さん」という言葉が口をついて出てくるのは、今でも一日4、5回。今朝も「お母さん」と言ってるんですよ。なぜ、母親なのか、よくわからないのです。しかし、しんどいときも「お母さん」、嬉しいときにも「お母さん」。良きにつけ、悪しきにつけ、「お母さん」という言葉が出てきます。

問:天国のお母様に見守ってほしいという願いなどがあるのでしょうか?

答:どうも、母親というよりは、全知全能の神様のような存在に語りかけている気もします。お母さんと神様は同義語とでも言いますか……。「お母さん、ありがとう」は「神様、ありがとう」と同じ意味合いだと感じています。

問:お母様はどんな逆境にもくじけない明朗快活な方だったと。お母様のことが大好きだったんですね?

答:あまり言葉では表現したことはないですけど、私は子どものころから、本当に母親のことが好きだったのだと思います。私の心の中で、母親の存在が非常に大きなポジションを占めているから、「お母さん」という言葉が口をついて出てくるのでしょう。そんな今の自分を、冷静なもう一人の自分が、「年いってるのに、かわいいなあ」と見ているのですが(笑い)。

週刊朝日  2013年9月13日号