約1年9カ月の服役を経て“シャバ”に戻ってきた元ライブドア社長の堀江貴文氏。地元福岡の魅力について、こう話す。
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最近、月に1、2回のペースで地元福岡を訪れている。以前よりも頻繁に行ってるかもしれない。
先日も、ネットマーケティング系のイベントでパネルディスカッションしてきたが、数千人の聴衆がつめかけるという前代未聞のイベントとなった。数千人って以前だったら考えられないこと。さらに、その後は九州大学のキャンパスや映画祭でもトークしたりと、福岡が盛り上がっていることは、どうやら間違いなさそうだ。
2年ちょっと前の大震災の時に全線開通した、九州新幹線は感動系のCMで話題になったし、インフラも少しずつ整ってきているのもある。もともと福岡空港は都心から十数分でアクセスできるという他の地域にはない優位性もある。
またエマージングなアジアにものすごく近い。韓国は1時間前後でアクセスできるし、台湾や中国の主要都市も2時間圏内だ、東南アジアも3、4時間でアクセスできる。これからはアジアの時代、実はこんなに利便性の高い都市はないかもしれない。
さて、そんな福岡に成長中のスマートフォン向けメッセージングツール運営企業のLINE社が新しい社屋を造るというニュースが飛び込んできた。ビルを借りるのではなく、自社ビルを建てるのである。
現在、“イケてる”会社の共通項にはデザイン重視の社風がある。アップルしかり、LINE社の親会社NHNもソウルに自社ビルがあり、トイレまで自社のデザイナーがデザインして造っているのだそうだ。
LINEの大ヒット商品であるスタンプも権利者側ではなく、LINEのデザイナーがコントロールして作っているという。だからクオリティーの高いスタンプが続々リリースされるわけだ。彼らが福岡にオフィスを構えるということは、大きな意味を持っているのではないか。つまり、アジアへ向けての拠点として福岡に本社機能を移すことまで視野に入れている可能性がある。
LINE社が、もし福岡に本社を移すとなればIT系の企業が大挙して押し寄せてくる可能性は高い。高島市長は改革派の市長として売り込み中だし、積極的に企業立地を推進していくはずである。もともとのインフラに加えて大震災が少ない土地であることも、今後の企業立地を考える上でプラスになりうる。
もちろんアジアが近いことは前述の通り。私は先日地元の西日本新聞の取材を受けた折に、壮大な構想を話してみた。日韓海底トンネルを造って、そこにリニアモーターカーを走らせ、ソウルと福岡を1時間程度で結ぶ。さらに北朝鮮を通って、中国・大連や北京まで延伸することができれば、商流が大きく変わることは間違いない。
資金調達が課題となるが、そのようなベンチャー企業を作ってファンドから調達して建設することは夢物語ではない。
結論として福岡は今ものすごいポテンシャルを秘めている。実は日本の地方都市の中で一番ポテンシャルが高いのではないか。そう思うのである。
※週刊朝日 2013年8月2日号