「中小」の企業官僚になる、大企業に就職する……。それが当然の進路なのか? 実はそうでもない。小さな会社やベンチャー企業に進む東大生もいる。

 東大では毎年、大学院進学者などを除いた約1千人の学部卒の学生が就職する。東京大学新聞がまとめた2010年度と11年度のデータを比較すると、就職人気ランキング20位までの企業と中央官庁に就職した人数は、403人から333人に減っている。従業員500人以下で、事業内容などが明確な主な就職先の企業は39社あった。自分の意欲や能力を活かせる企業であれば、会社の規模に関係なく飛び込む学生が徐々に増えている。

「今後も中小、ベンチャー企業を志望する東大生は増えると思います」

 と語るのは、企業と学生のマッチングを支援しているスローガン(東京都港区)の伊藤豊社長だ。同社が橋渡しをしてベンチャー企業に就職した東大生は、ここ5年間で5倍以上に増えた。

 伊藤社長は、「ハードワーク」を望んでいる東大生と日々接している立場から、彼らの志向をこう分析する。

(1)大企業への就職が安泰ではないと理解している
(2)将来の「新御三家」になる企業を見つけたい
(3)ブランド力に頼らず自分の価値を高めたい。

 JALやシャープのような誰にも安泰と思われてきた大企業でさえ、凋落した。一方で、数年前まで小さなベンチャー企業だったディー・エヌ・エー、グリー、サイバーエージェントは、今や就職活動において「新御三」と呼ばれ、飛ぶ鳥を落とす勢いだ。また、フェイスブックやツイッターを使いこなす彼らは、自分の発信したことに反応したフォロワーの評価こそ重要視している。

 彼らは、企業ブランドには興味はない。

AERA 2012年10月8日号