尖閣国有化をめぐって中国各地で反日デモが多発し、一部が暴徒化して日系企業にも大きな損害を与えた。政府が中国側の反発の大きさを読み切れなかったのは、外務省の中国語研修組である「チャイナスクール」の官僚たちもさることながら、民主党の「政治主導」の失敗と断じる声も大きい。

 政権交代後にしか関係修復は望めないとみるのは、元外務官僚で公明党の遠藤乙彦衆院議員だ。

「原則を維持しつつ、柔軟に対応するには相手と腹蔵なく意見を交わせるパイプ役が必要。そんな存在がいない民主党では、事態の鎮静化は見込めない。秋に中国側の指導体制は変わるが、日本側も政権交代が必須だ」

 民主党ではもはや中国の信頼を得られず、チャイナスクールも脇に置かれているとなると、当座のパイプ役として期待できそうなのは経済界ぐらいだ。

 だが、国交正常化の直後から37年間続いてきた日中経済協会(会長・張富士夫トヨタ自動車会長)の訪中代表団派遣は早々に延期が決まった。政府要人や経済官庁幹部との面会がかないそうもない、との理由からだ。

 これまでは両国の緊張が高まった時も、経済面では深刻な影響を残さない「政冷経熱」といわれる関係が続いてきた。日本企業による投資や技術供与が中国の経済成長を促してきたとの思いが中国側にもあったからだ。

 だが、中国は名目国内総生産(GDP)で10年に日本を追い抜いた。欧米の有力企業の参入も相次ぎ、「お手本役」としての日本企業の地位は低下した。

「30年代の原発ゼロ」など、企業の意に沿わない政策を打ち出す民主党の尻ぬぐいに、一肌脱ごうという企業は出ない、との指摘もある。「政冷」が、「経冷」に発展しかねない非常事態なのだ。

AERA 2012年10月8日号

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