『美坊主図鑑』(廣済堂出版)や「坊主バー」など、最近、「お坊さん」が話題になっている。少女漫画の世界でも、「お坊さん」との恋愛を描いた作品が人気だ。

 主人公で英会話学校講師の桜庭潤子がお見合いしたのは、東大卒のお坊さん、星川高嶺。そんな出会いから始まる恋愛模様を描いたのが、月刊漫画誌「Cheese!」(小学館)で連載中の「5時から9時まで」だ。単行本は6巻まで発売されており、累計100万部を突破しているという。

「主人公の年齢設定が27歳だったので、普通の恋愛というより、結婚を視野に入れる話にしたかったんです。海外ドラマに憧れる主人公だったので、真逆の“お香のにおい”というのが浮かんで、お坊さんを登場させました。結婚相手としては、いいような悪いような不思議な“物件”。そこがおもしろいと思ったんです」

 そう話すのは、作者の相原実貴さんだ。2009年に本作の掲載が始まると、タイミングよく“坊主ブーム”もやってきたという。

「お坊さんが割と好きだったんです。ストイックな感じが逆にセクシーというか。禁欲できているからこそ、内に熱いものを秘めているのだろうなって。そういうのをぶつけられると女性はうれしいのではないかと」

 作品を描く上で、お坊さんに嫁いだ女性に取材をしたとき、興味深いエピソードが出てきたという。

「お坊さんの家に最初に泊まったとき、『翌朝に梅干しを出された』と聞いたんです。お茶と梅干し、というのはそこのしきたりだったようですが、そのときはいじめなのか、もてなしなのかわからなかった、と。なかなか長期の旅行に行けないとか、跡継ぎ問題での長男とか次男の違いとか、結婚相手としておもしろいな、と思うことが多いんです」

 作中の星川は、街中でも袈裟姿を貫き、主人公にも常に丁寧語で語りかける。

「袈裟を着せるだけで引き締まる感じがするので描くのは楽しいです。よくそんな恥ずかしいことを真顔で言えるなってことでも、お坊さんに言わせると丁寧な感じがして素敵だな、と」

 読者からは「もっとお坊さんらしく」ではなく、「もっと主人公とイチャイチャさせて」といった声が多いとか。同誌6月24日発売8月号の通販企画では、なんと星川の「濡れ襦袢(じゅばん)」姿の抱き枕も販売されるという。

 恐るべき、坊主のモテ力。

週刊朝日  2013年7月5日号