11月14日(現地時間)から激化したイスラエル軍とパレスチナ武装勢力「ハマス」の戦闘は、21日、エジプトの仲介で停戦が成立した。イスラエルのハイテク兵器が世界中から注目されるなか、軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、諜報機関のアナログな情報収集能力の精度と、その役割について、こう指摘する。
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イスラエル軍は、ハマスがパレスチナ自治区ガザ内に隠匿したロケット弾の発射地点を習字に瞬時に特定し、空爆で破壊することができた。しかし、それにもかかわらず、停戦に至るまでハマス側のロケット弾攻撃は一向に沈静化することはなかった。つまり、ハマス側が隠したロケット弾の所在情報を、イスラエル諜報機関が正確にキャッチできていなかったのだ。
これまでイスラエル諜報機関は、ガザの隅々までスパイ網を張り巡らしていると思われていたが、実際には限界があったことが明らかになってしまった。恐らくイスラエル政府は現在、早急な情報網再構築の必要性を痛感しているはずだ。 もっとも、諜報機関の役割は「スパイ活動」にとどまらない。今回の停戦の主役は、エジプトのモルシ大統領だったが、現地報道によると、実際にその下地を作るために極秘に動いたのは、イスラエルの諜報機関「モサド」とエジプトの「総合情報局」だったという。
外交の秘密交渉の場でしばしば登場する「バックチャンネル」がうまく機能した例だが、こうした裏ルートがあるのが、常に紛争の中でサバイバルしてきた中東諸国と、わが日本との大きな違いだろう。
※週刊朝日 2012年12月7日号