9月15日、野田政権が建設を中断していた3原発について、稼働を前提に工事再開を認める考えを示した。しかし、工事再開が容認された3原発の一つ、電源開発の大間原発(青森県)の安全性に「重大な欠陥」があるという。

 国は、電源開発が大間原発の資料を保安院に提出した後の2006年9月に原発耐震指針を改定し、旧指針では「5万年前以降にずれ、動いた断層」だった活断層の定義を、「後期更新世(13万~12万年前)以降に動いたことが否定できないもの」と広げた。東京電力柏崎刈羽原発が被災した07年の新潟県中越沖地震は、「未知の活断層」が原因とみられた。安全性に配慮して活断層の審査をより厳格にする動きが急速に進んだ。

 文書で、電源開発は「シームS-10にズレは見られず、活断層ではない」との見解で、「変形は岩盤が風化し、水を吸って膨張したためできた」とした。このシーム(粘土質の軟弱な薄い層)ができたのも「原発敷地近くの別な場所で行った掘削調査で13万~12万年前よりも古い時代であることがわかった」と主張した。

 国はこの見解を「妥当」とし、大間原発は08年に着工され、工事進捗率が4割近くで東日本大震災が起き、建設は中断されていた。

 だが、学者らの分析は異なる。シームは食い込み具合から、「断層のズレ以外では説明できない」というのだ。新指針の年代基準からしても「明らかに活断層」との立場だ。

 ほかの活断層研究者にも取材してみたが、多くが同じ見解だった。日本活断層学会の元会長で、京都大の岡田篤正名誉教授は、保安院が作成した文書を見て、こう言った。

「掘削調査の図面と写真を見る限り、典型的な活断層だ。堆積物が上下に変位している。活断層は2度動いた、と読み取れる」

 大間原発の安全審査を担った大阪市立大の原口強准教授(地質工学)に見解をただすと、「回答は差し控えたい」と口をつぐんだ。

週刊朝日 2012年10月12日号