幻視や錯視などの症状が出るレビー小体認知症が増えているという。実際に夫がレビー小体認知症に罹ったという、若年レビー☆キラリ会代表の金子節子さんに話を聞いた。
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オシャレで優しい主人がレビー小体型認知症と診断されたのは、2年前の春。61歳のときです。20年前に結婚したときから膠原病を患っていて、健康には人一倍気を使っていたのですが。
最初に彼が見た幻は猫。払いのけるしぐさをしながら、「足にまとわりつくんだ」と言うんです。主人は以前猫を飼っていたので、“あの世”から会いにきたのかと思いました。でも動物霊がつくのはどうかと思い、夫婦でおはらいに行ったんですよ。
幻視や錯視以外に起きたのが替え玉妄想です。「君は本物か?」って何度も私に聞くんです。洗面所で着替えのお世話をしていると、急にパンチが飛んできて、なんで勝手にうちのやつの服を着るんだ、と怒鳴る。すごい力でつかまれるので、私はキズやあざだらけになりました。
でも翌日キズを見ると、大丈夫?となでてくれる。そして、「僕こわれていっちゃうよ」と主人自身が深く落ち込む。その姿を見て、つらい状態から「一緒に脱出しよう」と決めたんです。
よくよく観察すると、幻視にも、いいものと、よくないものがあるようでした。だから「上から光が落ちてる。キレイだろ?」というようなときは共感して、虫や蛇みたいにイヤなものは、確認して一緒に退治することにしたんです。
主人は指先から「糸が出てくる」と言うことも多かったのですが、そういうときは主人の手をすっぽり包むようにしてから幻の糸を受け取り、おまじないをするんです。
「すっきり、さわやか、元に戻った。ポンッ!」そう言って、手を合わせてパチンッとたたく。すると幻が消え去るらしいのです。
レビー小体型認知症は、相手の気持ちにチャンネルを合わせることで前進できる。家族のオリジナルのケアを考えるといいと思うし、つらければ泣いたっていい。私もいっぱい泣きました。私が行き詰まっていると、「一人で抱え込まないで」と主人が言ってくれます。
※週刊朝日 2012年11月16日号