ジャーナリストの田原総一朗氏は、日本がどんどん落ちこぼれて、政治でも経済でもどん底で低迷しているのは、各政党の「保守化」が原因と分析する。
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いまや日本人のほとんどが、この国が社会主義、共産主義になることを望んではいない。率直に言えば、論外だと思っているだろう。
ということは、程度の差こそあれ、ほとんどの国民が自由主義経済、そして日米安保条約を事実上認めていることになる。自民党、民主党、公明党、みんなの党、日本維新の会、そして国民の生活が第一など、すべて「保守党」ということになるのだろう。そこで改めて「保守とは何か」を考えざるを得なくなったのだ。
広辞苑の定義を前提にすれば、現行憲法を破棄すると宣言している石原慎太郎前東京都知事などは、明らかに保守ではない。日本の統治機構を変革することを目的とする橋下徹大阪市長の維新の会も、保守党からかけ離れている。安倍晋三総裁率いる自民党も、憲法を改正し、「強い日本にする」とうたっているのだから、これも保守ではない。公務員制度改革を標榜(ひょうぼう)するみんなの党もそうだ。こう書くと民主党議員の面々は怒るだろうが、野田佳彦首相が所信表明演説で「中庸の姿勢」を強調した民主党などは、数少ない「保守党」だろう。
この10年というもの、どの首相も、どの政党の党首も、「改革、改革」と連呼してきた。だが、実は日本は現実には何も変わっていない。
誰も彼もが「改革」を力説しながら、何も改革できずに混迷を深めているということは、つまり日本のどの政党も実は「保守党」になっているということなのではないか。その意味では、「中庸」を強調し、保守党であることを表明した野田民主党は、「正直な政党」だと評価すべきなのだろうか。
※週刊朝日 2012年11月16日号