実際に、これまでに避難解除された浜通り地域には、生まれた土地に帰りたいというじいさんばあさんだけではなく、数は少ないけれど若い人も戻ってきている。青年会などでまちづくりを考えている人もいて、もう動き始めています。新しい人を受け入れるのもいいし、農業と原発しかなかった街に新しい産業を起こすこともできると思う。そういうまちづくりを応援する内容があってもいいのに、メディアが原発周辺の自治体を取り上げるとき、原発の是非に偏った内容になってしまっています。高台に団地や集落を移転して復興を進める宮城県気仙沼市や、浜通りの中でも30~40代の農家の2代目たちが新しいビジネスを始めている福島県いわき市のような、ほかの被災地とは取り上げられ方が違うなと感じます。
せっかく住んでOKになってスーパーやドラッグストアなんかもできているんだから、住宅が何棟できましたとか、このぐらいの価格で土地付きの一戸建てが手に入れられますよ、第二の人生が始められますよという情報をテレビで流してもいいんじゃないか。放射線量についても、今はこのぐらいですときちんと伝えれば、実は東京とそこまで変わらないという事実もわかってくるはずです。タレントを呼んで、街ブラさせてもいい。そこに住んでいる人たちと楽しく交流して、日常をそのまま伝えればいいと思うんです。
来年は震災から10年の節目の年になります。いい加減に“原発の街”の報道を見直しませんか?
僕自身はこれまで通り、ちょっと時間ができたらプライベートで東北を回って、うまいものを食べて、楽しく遊ぶだけの旅を続けていこうと思っています。敵・味方とか賛成・反対ではなく、そこで知ったことや出会った人たちの思いなど、事実をわかりやすく伝えていきたいと思っています。