3月は卒業の季節だ。と同時に、卒業ソングの季節でもある。学校はもとより、カラオケボックス、テレビやラジオ、インターネットなどでさまざまな卒業ソングが歌われ、流れることになる。
たとえば、3月9日放送の「ヒルナンデス!」(日本テレビ系)では「20代~30代の男女に聞いた『卒業ソングを歌う歌手』トップ10」が紹介されていた。1位はレミオロメンで2位が松任谷由実、3位以降には森山直太朗、海援隊、いきものがかりが続く。それぞれの代表的な卒業ソングを思い出す人も多いだろう。
ただ、そんな卒業ソングが定番化したのは、ここ十数年のことだ。昔は卒業式で歌われるのも何より「蛍の光」や「仰げば尊し」だったし、春に合わせて卒業ソングがリリースされることも今ほど盛んではなかった。例外として85年には、4人のアーティストが同名異曲をほぼ同時に発表。「卒業」戦争と呼ばれたが、珍事だからこそニュースにもなったのである。
それゆえ、卒業ソングのヒットはかつて散発的でイレギュラーだった。「高校三年生」(舟木一夫)しかり「贈る言葉」(海援隊)「卒業」(尾崎豊)「my graduation」(SPEED)しかり。そんな状況を一変させたのが、03年のヒット曲「さくら(独唱)」(森山直太朗)である。この年の「NHK紅白歌合戦」第二部のオープニングでも歌われたこの曲は、卒業ソングにひとつの革命をもたらした。
というのも、これ以前の卒業ソングに「桜」が使われることは意外と少なかったからだ。森山の成功が「卒業+桜」という相乗効果に気づかせ、鉱脈として活用されていく。これ以降、05年の「桜」(コブクロ)06年の「SAKURA」(いきものがかり)08年の「桜ノ雨」(absorb feat.初音ミク)09年の「10年桜」(AKB48)という具合に、さくら色の卒業ソングが量産されていくわけだ。
その流れのなかで、桜ソングと卒業ソングの違いも曖昧化した。また「3月9日」(レミオロメン)のように、結婚ソングとして作られながら「3月の風」やら「桜のつぼみ」が歌われることで、さくら色の卒業ソングとして人気を得るケースも出て来る。桜、3月、卒業といったものが揃えばウケるので、そこを狙ったリリースも増え、こうしたものが定番となったのである。