カズー:そうですね。アメリカの事例を見ていると、企業は同じエージェンシーと3年とかの長い期間で、その中に成功も失敗もありながら、ひとつのブランドの輪郭を世の中に出していくんです。一方、日本は一案件ごとに競合プレゼンにかける悪いカルチャーができてしまっていると思います。ぜんぜん長期的じゃなくて、短期的にどう刈り取るかだけ。毎回競合プレゼンで、とにかく強い案を出したエージェンシーを単発で選択されるので、長期的な考え方を共有したり、深く相談し合ったりという関係ができないままなんです。やっぱりそれは良くないと思っています。
足立:大手のクライアントが作った悪しきカルチャーでしょうが、単発でエージェンシーを交代するというのは本当はよくないとわかっているはずなのに、何でいまだに変わらないのか、不思議といえば不思議です。
カズー:昔はそれがエージェンシーの営業のモチベーションになったのかもしれませんね。銀座で毎晩接待とか、バブルの時代には、クライアントの宣伝部長が家に帰ると500万円の新車が届いていた、なんていう話も聞いたことがあります。それで30億の仕事が来たら安いという……。
足立:そんなことをしたら、今は捕まってしまいます。でも、毎回競合プレゼンというビジネス慣習だけは残っています。出入り業者扱いというのも、悪しき慣習でしょう。お金を払って何かをやってもらうというのは、支払う側ともらう側は対等な関係ですからね。本当はそこに、上下がないんですよ。
カズー:対等なパートナーで、関係が深くなれば、正式な打ち合わせだけではなくて、個人的にLINEとかで、「これ、どうしようか?」という相談をしていただけるようになります。そのほうが、いい広告を世の中に出していけるはずですよね。
足立:ダメなクライアント、その5に「クレームを恐れすぎる」はありませんか?
カズー:批判って、されて当たり前ですからね。NHKの「おかあさんといっしょ」にだって批判がある。それなのに、ちょっとクレームが入ると「すぐお客様相談室に」とか「じゃあ、変えましょう」とか。どうしてこうクレームに弱い体質になってしまったのか。