カズー:クライアントから企画のオリエンテーションを受ける時に僕は、実は2つのことしか聞いていません。ひとつはビジネスゴール。それの製品やサービスをどのくらい売りたいのか。もうひとつは、それを誰に届けてどんなふうに幸せにしたいのか。その2つだけを聞くようにしています。もちろん、数字とかコンセプトとかが書いてあるクリエイティブ・ブリーフをいただくので、ひと通りは見ます。でも、最後に残るのは、ビジネスのゴールと、ターゲットをどう幸せにしたいのかというクライアントの思いだけです。それにクリエイティブという輪郭を与えて世に送り出すというのが僕の仕事だと思っています。
足立:もちろん、クリエイティブ・ブリーフがいらないという意味ではありませんよね?
カズー:それはクリエイティブにとっていわば教科書で、「To Do」がロジカルに整理されるという意味ではとても重要です。ただ、最終的に通る案というのは、クライアントの意思決定者の「思い」と一致するものです。なので、意思決定者の方と心中する必要があって、その人のパッションがどこを向いているのか、その思いを聞き出すことが一番大事だと思っています。競合オリエンの時には、オリエンテーションが終わってから意思決定者の方に必ず会いに行って、直接、その方の話を聞くようにしています。営業任せとかにはしていません。すると、ここまでデカいことを考えているんだとか、ピュアに人を感動させたいんだといった感情とか、逆に外していいポイントとかも見えてきます。クリエイティブ・ブリーフをきっちり守ると、何もおもしろいことができないという場合もあるじゃないですか。なので、その面談での情報がその後の企画にとても大事になってきます。実は、意思決定者の方に直接お会いして話が聞けることを、競合プレゼンの条件にしているほどなんです。
足立:ということは、マーケティング担当者は自社の最高責任者のこの企画にかける思いだとか、人柄みたいなことをクリエイティブの人にちゃんと伝えることが大事ということですね。