香織さんの教員仲間のなかには、育休を取りたいと言うと校長から「代替の教員を自分で見つけてくるならいい」と無理難題を押し付けられたり、異動を希望した先の校長から「育休から復帰したばかりの教員はいらない」と言われたりするケースまであるという。
日本教職員組合が2017年8~11月に行った「権利行使に関する調査」では、小・中・高校と特別支援学校の教職員に妊娠中の妊娠障害の症状の有無を尋ねており、小学校教職員の半数に症状があった。そのうち約3割が切迫流産(流産しかかる状態)、4人に1人が切迫早産だった(複数回答)。また、正規教職員の約4割が「労働環境が妊娠・出産に影響したと思う」と答えている。妊娠中に妊娠障害があり、休暇の必要があったが利用していない割合は小学校で約2割、出勤時間をずらすなどの「通勤緩和措置」の必要があったが利用していない人は同3割を占めた。さらに、「2015年度以降、育児短時間勤務制度の行使状況」は、該当者のうち、育児短時間勤務で働いたのは小学校でわずか8.4%にとどまった。業務の多さ、人手不足が影響している。
状況は悪化の一途をたどり、教員のなり手不足が深刻化している。12月23日に発表された、文部科学省「令和元年度 公立学校教員採用選考試験の実施状況」によれば、小学校の採用倍率は2.8倍で、前年度の3.2倍から減少。平成3年度と並ぶ過去最低をつけた。高年齢の教員が大量に退職した影響で採用数が増えており、小学校の採用者数は前年度比1094人増の1万7029人となる一方、受験者数が前年度比3536人減の4万7661人となった。同調査から、10年前の2009年度と2019年度の受験者数を比べると、新規学卒者は1万3410人から1万7371人へと増えている。ところが、既卒者が3万5233人から3万290人に減っており、既卒者の占める割合が72.4%から63.6%に低下している。