あなたの「好きな撮影距離は?」。
『アサヒカメラ』2020年1月号で実施した写真家へのアンケートで、いちばん驚いたのがこの設問の回答である。
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「ケース・バイ・ケース! カメラ、レンズなしで自分がどきどきする距離」(清水哲朗)という回答もあったが、図表のように、無限遠を除けば、見事に2メートル前後に集中している。このような結果になるとは、まったく予想していなかったことである。
しかも、写真家の撮影分野はまったくばらばらで、実際に多く撮影している撮影距離は別として、2メートル前後の撮影距離を好む人が目立つ。
その理由に目をとおしていくと、写真家は撮影以前に、いかに被写体を観察することを重視しているかが伝わってくる。写真家は撮る前に「よく見ている」のだ(それがたとえ一瞬でもだ)。
これまでに大勢の写真家の撮影をする様子を間近で取材してきたが、いつも驚かされるのは彼らの視点である。
「え、こんなところを、こんなふうに撮っているの!」と、びっくりさせられることがたびたびある。
それは人の表情や街角の陰影、風景の造形だったりするのだが、とにかく「よく見ているものだなあ」と感心させられる。そこには被写体への関心の高さや愛情が感じられる。逆にそれがないと、よい作品づくりはできないということなのだろう。
水越武さんは言う。
「大きなランドスケープとか、被写体によってもちろん撮影距離は違うわけですが、私は1、2メートルくらいの距離で写すのが好きですね。フットワークを生かして、歩きながら、ふっと気になる被写体を見つける。そうしたら、まず観察する。それが第一なんです。1、2メートルというのは被写体をしっかりと観察するのに理想的な距離じゃないでしょうか。だから、そのくらいの距離で撮影することがいちばん多い。最近、取り組んでいるライチョウも近づける鳥なので2メートルくらい」
{!-- pager_title無限遠を好む写真家も多かった] --}