【1】水ぶくれ
やけどをしたときのことを思い出してください。皮膚が赤くなって、水ぶくれができ、破けると傷になります。やけどの範囲が広いと、全身の皮膚から水分が失われ、傷口からばい菌に感染します。
重症薬疹は、全身の皮膚がやけどのあとのようにズルッとむけてしまいます。この皮膚がむけてしまう前段階が、水ぶくれです。専門的には水疱(すいほう)と呼びます。
不幸にも薬疹ができ、その過程で水ぶくれが出てくるとすれば、順番としては次は傷になります。なので、水疱の段階ですぐに入院して治療をすることが必要です。
ちなみに水ぶくれになる前段階もあります。それが二重の輪っかを描いたような皮膚病変です。弓矢の的(まと)をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。この皮膚病変ができると次は水疱になります。早い段階で重症の薬疹に移行するタイプのものか、そうでないか見分けるのに重要なサインです。
【2】眼や口などの粘膜症状
Stevens-Johnson症候群(SJS)は全身にばい菌が広がる菌血症や多臓器不全を合併する危険がある重症薬疹です。SJSは3%の患者さんが死に至ります。この薬疹の特徴は、眼や口などの粘膜に症状が出ることです。
眼が真っ赤に充血し、唇から出血する。そういう症状が体の薬疹とともに出現した場合、SJSを疑い、早急に治療を開始します。
眼の症状が強い場合、SJSが治った後も失明してしまうことがあります。私たち皮膚科医は、SJSと診断するとすぐに眼科での診察も依頼します。
初期は皮膚の症状はそれほどひどくなく、眼や唇など粘膜の症状だけという場合もあります。眼の違和感、唇からの出血はSJSの可能性もあり注意が必要です。
【3】発熱
薬疹が重症化するとブツブツの範囲が広がるだけでなく、熱も出ます。薬疹は一般的に、薬を飲み始めて1~2週間で症状が出現することが多く、ブツブツが体に広がっていくのとあわせて熱も出るようであれば注意が必要です。中毒性表皮壊死症(TEN)へ移行する可能性があります。
ただ、全身のブツブツと発熱だけでは、必ずしも薬疹とは言えなかったりします。なぜなら、似たような症状に風疹や麻疹などのウイルス感染もあるからです。素人判断はせず、当たり前のことですが、確定診断のために皮膚科専門医に診てもらうようにしましょう。
まとめ
今回は重症薬疹となる前段階で注意すべき症状三つを紹介しました。薬を飲み始めて皮膚にブツブツが出た場合は、我慢せずに主治医に報告することが大事です。そして、上記三つの症状が合併した際には、重症タイプの薬疹に変化する可能性もあるため、早急に皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。
万が一、重症薬疹で治療が必要となった場合は「医薬品副作用被害救済制度」があります。医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページに詳細が記載されていますので参考にしてください。