10月15日の箱根町宮ノ下。崩れた土砂で寸断した鉄橋。橋桁からレールがはがれ流されている(C)朝日新聞社
10月15日の箱根町宮ノ下。崩れた土砂で寸断した鉄橋。橋桁からレールがはがれ流されている(C)朝日新聞社
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台風直後は小涌谷の踏切にも豪雨で流されてきた土や石、折れた枝が堆積した(C)朝日新聞社
台風直後は小涌谷の踏切にも豪雨で流されてきた土や石、折れた枝が堆積した(C)朝日新聞社

 2019年10月11日未明から13日にかけて列島を襲った台風19号。神奈川県箱根町では、降り始めからの総雨量が1,000ミリ超を記録、これは観測史上最多の降水量であった。これにより土砂崩れなどで交通網は寸断される事態に陥った。

【豪雨災害に見舞われた小涌谷踏切】

 箱根において重要な交通手段である箱根登山鉄道の被災は甚大で、土砂崩れによる橋梁流出、枕木を固定している道床の流出被害が十数カ所に渡って確認された。このため、箱根登山鉄道は鉄道線・鋼索線(ケーブルカー)とも運休せざるを得なかった。鋼索線は16日から運行を再開したが、鉄道線の箱根湯本~強羅間は終日運休が続く。秋の観光シーズンに大打撃を及ぼす箱根登山鉄道の現況をまとめた。

 
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■大正時代に完成した箱根登山鉄道

 箱根登山鉄道の歴史は古く、比較的勾配が緩やかで小田急電鉄の特急ロマンスカーが乗り入れる小田原~箱根湯本間の開業は1888(明治21)年、今回の台風被害が甚大な箱根湯本~強羅間は1919(大正8)年に開業した。箱根湯本~強羅間はヨーロッパ各国の登山鉄道と同様に、車輪と鉄レールの粘着力だけで走る鉄道として計画され、ジグザグに線路を敷いて列車の進行方向を変えながら急勾配を克服する「スイッチバック」をこの区間に3カ所(出山信号場、大平台駅、上大平台信号場)設けて、勾配を国内で最も急な80パーミルに抑えた。また山肌を縫うように敷設されたことから、カーブの曲線半径が30メートルと小さい。

 箱根登山鉄道の開業は箱根にとって一大センセーションを巻き起こし、観光ルートを一変させるほどであったという。山岳鉄道の魅力がたっぷり詰まった路線は観光資源としてだけでなく、地元の足としても活躍している。

■復旧のめどが立たない登山鉄道

 そうした箱根登山鉄道であるが、箱根湯本~強羅間の具体的な被災状況を見てみると、大平台~宮ノ下間のトンネルの近くが土砂や石で埋まり、宮ノ下~小涌谷間で約23メートルに渡り線路が押し流された。小涌谷駅近くでは踏切やその回りの線路が広く土砂に覆われ、流木や石も広範囲に散乱している。土砂は軌道にかぶさり橋梁を破壊しただけでなく、信号設備も寸断した。

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登山鉄道ならではの立地が復旧を阻む