佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
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※写真はイメージです (Getty Images)
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 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、公演中の舞台で起きたある事件について。

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 ちょっとご無沙汰です。舞台のため、当コラム、少しお休みを頂いておりました。この文が配信される10/13に舞台は福岡で大千秋楽を迎えます。感謝。で、当コラム、再開。ふたたび、よしなに。

 さて。その舞台の演目は「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」。作と演出は三谷幸喜さん。僕はシャーロックの相棒、ワトスンを演じました。実はこの舞台の本番中、大変な事件が起きたんす。コレ、書いていいものか迷いましたが、三谷さんも朝日新聞の連載エッセイでこの事件を書いてたので、僕も書いちゃうね。

 舞台の後半で、トランプを使ったゲームを、出演者7人全員でやるシーンがありまして。ありましてとサラッと書きましたが、実はクライマックスの大事なシーン。配る人(ゲームの親)は切ったカードを配ったように見せかけて、用意されたカードとすり替えてから配る。なぜなら、誰にどのカードが配られるかはその後の芝居の展開にムチャクチャ関わってくるから。つまり、配りミスをしたら、その後の芝居が立ち行かなくなる。重責。配る人、重責。

 で、配る人、よりによって俺。ミスターテンパリストの名を欲しいままにする俺。でも俺、頑張った。観劇した妻に芝居の感想を聞いたら、「カード、よく配れたねぇ、君が」と芝居の感想でもなんでもない感想を言われたほど、配り役、頑張った。配り役ってなんだ。とにかく頑張った。あの事件が起きるまでは。

 わりと引っ張ってるが、皆さん、ご想像の通り、配りミスしちゃったの僕。配りミスリングしちゃったの僕。計3回配るんだけど、本来3回目に配るべきカードを、2回目に配っちゃったの僕。

 異変にはすぐ気づいた。だって配ったあと、シャーロック役の柿澤勇人が半笑いだから。ヴァイオレット役の広瀬アリスも半笑いだから。2人、半笑い。僕、全テンパリ。でも芝居、続けなきゃ。でもカード間違ってるからこの後の芝居、全然成立しない。でも芝居続けなきゃ。あわわ、あわわ、あわ%#&*℃$@……。

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機転を利かした広瀬アリスが…