一部の認可外保育施設より質の高い幼児教育をしている外国人学校が、なぜ対象外となったのか。そこには、政府の思惑も透けて見える。

 幼保無償化の対象外となった88の施設のうち、40を朝鮮幼稚園が占める。民主党政権の目玉政策として始まった高校無償化では、安倍政権が発足した後の13年に省令を改正、朝鮮学校を対象外にした。しかし、拉致問題や朝鮮学校が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と関係が密接だという「政治的理由」で高校無償化の対象外としたこともあり、朝鮮学校の卒業生が全国5地域・支部で訴訟を起こした。そのうち、大阪地裁では原告である朝鮮学校の卒業生が勝訴。高裁では覆ったが、政府が敗訴する異例の裁判となった。幼保無償化でも同じように朝鮮学校だけを対象外にすれば、訴訟が再び起きて敗訴の可能性も捨てきれない。そのため、「朝鮮学校を外すために、各種学校全体を除外したのでは」との見方が外国人学校の関係者の間で広がっている。

 各種学校の中には認可外保育施設の申請をしている施設もある。そこで、東京都内の2つの朝鮮幼稚園が都に認可外保育施設の届け出を出したが、都は一度受理した届け出を朝鮮学校に突き返した。今年4月、政府が各種学校が認可外保育施設の資格を持てないよう、地方公共団体に通達を出したためだ。

 新しい基準をつくってまで「外国人学校外し」を政府は進めているが、現実的には外国人学校の幼児教育の実態を見れば、一律に除外することには無理がある。

 埼玉朝鮮初中級学校の幼稚部に子供を通わせる母親は、近所にある7つの保育園で定員超えのため入園できなかったため、子供を朝鮮幼稚園に通わせることにしたという。今回、無償化の対象外となったことに納得できないが、朝鮮学校の幼稚部に入ったことに後悔はしていない。

「一度幼稚部の様子を見てもらえればわかると思いますが、民族教育の他にもリトミックや英語教育など、カリキュラムがしっかりしています。先生だけではなく、地域で子供たちを支えている。通わせてよかったと思ってます」

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外国人学校排除は日本の将来に禍根を残す