実際、自分も啓発チラシを配ったり、関係団体の方々と話をさせてもらう中で、詐欺被害の実態や、気を付けるべきポイントなどをたくさん知った。普段、こういう話に興味を持たない若い人らにも知ってもらえたのであれば、意味のあることだと思っている。
上記の言葉が、たむらから聞いた「今、宮迫が思っていること」の骨子だった。
もちろん、僕は宮迫の代理人でもなければ、スポークスマンでもない。宮迫の考えを礼賛するわけでもなく、逆に否定するわけでもない。
この原稿を書くにあたり、再度、たむらに確認を取ったが、そのまま書いてもらって大丈夫とのことだったので、現在の宮迫が何を考えているのか。その一部を示す話として、ここに綴っている。
宮迫の言葉に対して何を思うか。当然、人それぞれの感覚があってしかるべしだが、僕がたむらから話を聞く中で感じたのは宮迫の“落ち着き”だった。
冷静に状況を分析し、あらゆる声も受け止めた上で、自分のスタンスはしっかりと示す。会見時は憔悴しきった表情も見せていたが、あれから約3週間が経過し、あの頃とはまた違う心の馬力みたいなものが戻ってきている。そんなことを強く感じた。是非はともかく。
宮迫の動きもほぼ定まり、場合によっては吉本退社を宣言していた「極楽とんぼ」加藤浩次も今後のスタンスを表明した。騒動が収束に向かっているのは間違いないが、吉本を長く取材してきた者として、吉本の構造的に心配なことがある。
20年前、僕がデイリースポーツに入社した頃は、吉本担当が集う記者スペースは難波の吉本本社オフィスのど真ん中にあった。周りでは社員が企画会議をしたり、芸人が生々しくギャラ交渉したりしていた。こんなところに記者スペースを作ってしまってよいのか。こちらが心配するくらい、牧歌的であり、ある意味、ほんわかした空気だった。
それがいつしか、記者スペースはプレスルームという形に変わり、オフィスのど真ん中から隔離された部屋に変更された。企業としては当たり前のことなのだろうが「吉本の空気も変わりましたね」などとベテラン先輩記者と話しているうちに、いつの間にか、公との接点がグッと増えていた。
ざっくり言って「お上の言うことなんて知るか!」という具合に、体制へのアンチテーゼの色も持つのが芸人という職業。そして、その芸人を商品として扱うのが吉本興業。
この構図の中で、吉本がお上と握手をする。すると、組織のどこかにはねじれが生まれる。このねじれからくるひずみが一連の問題の根底にあるのではないか。そんな気がしてならない。(中西正男)